まるごと青森

【下風呂温泉郷】大湯・新湯から「海峡の湯」へ

観光スポット 温泉・宿泊 グルメ | 2020-12-01 20:00

2020年11月30日と、翌12月1日。

歴史的な瞬間に立ちあってきました。

 

本州最北の村「風間浦村」にある、青森県内有数の温泉地「下風呂温泉郷」。

下風呂温泉郷入口。右手に見えるのは津軽海峡。

ここには、室町時代から続くといわれる温泉浴場があります。

江戸時代には南部の殿様がこの地を訪問し、泉質に感動した殿様は、この地の2つの温泉「大湯」と「新湯」それぞれに「湯守(ゆもり)」を指名。

貴重なこれらの温泉を守っていくため、利用者から入浴料を頂いて維持していくようにとの命を受けたのだそうです。

その後、湯守は番台さんとなり、下風呂温泉郷の同じ場所でそれぞれ「大湯」「新湯」を現在まで守り続けてきました。

今の建物になってから50年以上続いてきた温泉公衆浴場「大湯」
大湯から数十メートルの距離にある「新湯」。近いのに泉質が違うので観光客には両方楽しめました。
温泉郷の坂を上ったところにある大湯と新湯。下の方にはこんな看板があちこちにありました。

その大湯と新湯が、建物の老朽化などにより、11月30日、ついに最後の時を迎えました。

このブログでも何度か取り上げていますが、大湯・新湯ともに、地元に愛される温泉公衆浴場として、温泉郷を訪れた旅行客を暖かく迎え入れてくれていた場所。

お湯は暖かいを通り越して熱っっっついけど。

地元の方々との交流も含めて魅力的な空間でした。

閉館までの3日間は、入浴無料。

特に29日は最後の日曜日ということもあり、県内外から多くの客が閉館を惜しんで訪問していたそうです。

3日間限定無料の表示。

 

そして30日当日。

15時から大湯で、15時30分から新湯で、それぞれ閉館セレモニーが行われました。

地域の方々が見守る中、行われた閉館セレモニー
TV局などのメディアの方々もたくさん
風間浦村の富岡村長の挨拶。「50年以上の長い間、厳しい風雪や老朽化に耐えてくれた建物に感謝」とのことでした
財産区管理会会長の平井さん「下風呂には大湯派新湯派いるけど私は新湯派。寂しいけれど、新しい施設ができることに感謝」とのこと
大湯の最後の湯守となったお二人へ花束贈呈
新湯最後の湯守となったお二人。涙が印象的でした
暖簾に寄せ書きをする地元の方
来訪者には、かつて使っていた入浴札と記念バッジをプレゼントしていました。「閉館まであと0日」のカウントダウンボード。
地元の皆様が大湯の前で記念撮影
新湯の前でも記念撮影。双子のような2つの温泉
脱衣場には「永らくのご愛顧ありがとうございました」の横断幕
昔の大湯・新湯の写真も。今の建物はもはや何代目かもわからないそうです

 

30日は、一部観光客の方々もいましたが、平日ということもあり多くは地元の常連の方々。

最後の大湯と新湯をそれぞれ味わっていました。

大湯は2つの湯舟があり、手前がぬるめ、奥が熱め。普段は熱すぎて素人には入れない熱めの湯舟に、この日は多くの人が群がっていました。
新湯は湯舟が一つ。周りを取り囲み、みんなで談笑するのが新湯の醍醐味でした。

私も、地元の皆さんに比べたら少ないけど、今まで多くの知り合いやお客様をお連れしたり、休日にドライブがてら入りに行ったりと、たくさんの思い出があります。

そんな2つの温泉に最後の入浴。新湯に入っていると、80歳過ぎのおじいちゃんからは、自分が小さい頃に自分のおじいちゃんに背負われて新湯に来ていた頃からずっと新湯派だ、というお話しをしてくれました。

青い水槽のような湯舟に注がれる温泉もこの日が最後。
浴舎の屋根の上から湯けむりが立ち上るのもこの日が最後!

 

そんな、皆にとって思い出深い大湯と新湯が、18時、ついに最後の時を迎えます。

終わりの時が近づいた大湯。

最後の湯守となった大湯と新湯の番台さん達が、「ゆ」の暖簾を下ろし、周りで見守る人たちに深々と礼をして、消灯。

あっという間の出来事に、地元に人がポツリと呟いた「寂しいもんだな…」という言葉は、一生忘れられない言葉になりました。

暖簾をおろす湯守さん
暖簾を持って最後のご挨拶
そして浴舎の明かりが
消灯され、2つの浴舎はその役目を終えました

 

ありがとう、大湯、新湯。おつかれさまでした!

大湯新湯が消灯後、温泉郷の眼前の下風呂漁港で花火が打ち上げられました。綺麗なのがまた寂しいですね

 

そして、翌12月1日。

ついに、新・温泉公衆浴場「海峡の湯」がオープンです。

 

当日は、朝10時からオープニングセレモニー。その後除幕式とテープカットがありました。

多くの関係者が出席したオープニングセレモニー

 

こけら落としのテープカット。

 

そして、12時からいよいよ入浴開始です。

受付入り口。新築なので最初から感染症対策されていました。
海峡の湯は村営の公衆浴場。村外の方は450円。

文豪「井上靖」も宿泊した「旧長谷旅館」の跡地に、新たに建てられたこの温泉。

今までの2つの公衆浴場の源泉「大湯1号泉」と「新湯」に、旧長谷旅館で使われていた「大湯2号泉」の3つの異なる源泉のお湯が、一度に楽しめてしまう温泉公衆浴場です。

新しい海峡の湯。広く、新しくなりました。

しかも、湯舟は下北の名産品「青森ヒバ」を贅沢に使った「総ヒバ造り」。
窓に目を向ければ津軽海峡が一望できる、オーシャンビューの超・超・超・贅沢な温泉です。

大湯の熱めとぬるめ、新湯の3つの湯舟が一堂に会した浴槽たち。
眼前には津軽海峡。贅沢なオーシャンビューの温泉です。(窓は中から外は見えても外から中は見えないようになっているとのことでした)
新しい湯口もヒバ造りの箱から出ていました。
左が新湯、右が大湯1号泉の湯。成分も色も違う源泉が並んでいるのは全国でも珍しいのではないでしょうか。
もう一つの源泉、文豪井上靖ゆかりの「大湯2号泉」。こちらもオーシャンビュー

この日も1日だけ入浴無料ということもあり、地元の人たちがオープンめがけて一斉に温泉に入りに来ていました。

前日に新湯で会ったおじいちゃんのように、地元の人たちには「大湯派」と「新湯派」という、どちらかにしか入らない人たちがいて、今まではきっぱりと分かれていたのですが、両派が仲良く一堂に会する場所に。

脱衣場。無料のロッカーもありました
脱衣場には3つの源泉の成分分析表や、源泉の説明が並んで表示されていました。3つってすごい

 

 

実は私、オープンまでは少し不安がありました。

個人的な大湯新湯の醍醐味は、自分のような村外の人も暖かく迎え入れてくれて
気さくに話してくれる、地元の方々との交流の場所だった、ということ。

新しい公衆浴場では、そんな交流が失われてしまうんじゃないだろうか。

ところが、海峡の湯の新湯の湯舟に入っていた時に、目の前で湯舟に入っていたおじいちゃんから話しかけられ、隣の人が話に加わってきて、と。

あの素敵なコミュニケーションの場だった大湯・新湯は、そこにちゃんとあったのです。
一番うれしかった瞬間でした。

もちろん、新しい建物なので、温泉以外にも施設は充実。同じく総ヒバ造りのサウナや水風呂もありました。

総ヒバ造りのサウナ室。ヒバの香りが心地よいです。

 

そして、同施設内に新たにオープンした「下風呂おんせん食堂」。

メニューも充実していました。

下風呂おんせん食堂の内観。
ヒバの1本木から切り出したカウンターで津軽海峡を眺めながら食事が楽しめます。

 

ヒラメの漬け丼や、たった2,200円で鮟鱇鍋に鮟鱇の唐揚げ、とも和え、あん刺しまでついてくる鮟鱇定食も。

充実のメニュー。
ヒラメの漬け丼800円。
風間浦ならではの「あんこう定食」。左上があんこう鍋、真ん中上があんこうのお刺身、右が唐揚げ、右下があんこうのとも和えの豪華鮟鱇づくしです。
あんこうのお刺身のアップ。

身も心も大満足できる温泉公衆浴場でした。

これから下北も冬本番へ。もはや有名ブランドとなった「風間浦鮟鱇」の旬を迎えます。

冬季限定の鮟鱇コース狙いの宿泊客も増えるこれから、新たな楽しみが増えた下風呂温泉郷。

お近くの方や県内の方は、ドライブがてらにでもぜひ一度、お立ち寄りくださいね。

byかろ玉子

下風呂温泉 海峡の湯
場所風間浦村大字下風呂字下風呂71-1
TEL0175-33-2116
時間【入浴時間】
4月~10月 7:00~20:30
11月~3月 8:00~20:30
(最終受付 20:00)

【下風呂おんせん食堂】
昼の部 11:00~14:00
夜の部 17:00~20:00

【定休日】
毎月 第2・4火曜日、1月1日
※年末年始・GW・お盆の長期連休日やメンテナンス等に伴う営業時間の変更については施設へ直接お問い合わせください。
料金普通券 450円(村民でない中学生を除く15歳以上の者)
村民券 150円(風間浦村民で中学生を除く15歳以上70歳未満の者)
村民敬老券 100円(風間浦村民で70歳以上の者)
小学券 50円(小学生)
中学券 100円(中学生)
普通券(回数券) 4500円 (入浴券11回分)
※小学校就学前の乳幼児の入浴料は無料です。
Webサイト下風呂温泉 海峡の湯

掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。

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