こんにちは、JOMON担当のエムアイです!
今回は遮光器土偶(通称しゃこちゃん)で有名な亀ヶ岡石器時代遺跡に行ってきました。お話をうかがったのは、つがる市教育委員会・社会教育文化課の学芸員、木戸奈央子さんです。
遺跡に行ってみると、なんと発掘調査の真っ最中! 忙しいなか、時間をとってインタビューに応じてくださいました。
― えーっと、木戸さんの腰のあたりから、煙が上がっているように見えるのですが…
「これ、蚊取り線香です。このへん蚊がすごくて」
― 発掘調査ということで、完全防備ですね。今日のファッションのポイントを教えていただけますか?
「はい、まず帽子は必須ですね。首に巻くタオルも。それと顔を覆うこれ、なんていうんだろう、フェイスカバー? あとは軍手、長靴」
― パーカーの袖の上に腕時計を巻きつけるスタイルですね。
「その情報必要ですか(笑)。こういう話するならもっとちゃんとした格好してくればよかった(笑)」
― いかにも発掘のプロっていう雰囲気が出ています。発掘は好きですか?
「好きですね。もちろん土器や石器が出てくるのもおもしろいんですが、当時の人たちの痕跡、たとえば家とかお墓の跡なんかもあります。なんの跡なんだろうと考えながら作業するのがおもしろいです」
― 亀ヶ岡の史跡指定エリアのうち、これまで発掘調査がなされたのは数パーセントに過ぎないと、先日、新聞か何かで読みました。
「数値で表すのであれば、たしかに数パーセントだと思います。2020年に史跡の追加指定で範囲が拡大したのも影響していますね。史跡というのは保存することが前提で、掘るのは破壊行為にあたります。できるだけ狭い範囲だけを掘って、遺跡のことを明らかにしていくことが大事です」
― なるほど。面積の100パーセントの発掘を目指すようなものではないと。
「そうです。でも遺跡の性格や特徴など、全体像は明らかにしていく、それが私たちの務めです」
― 発掘のほかにはどんなことが好きですか?
「縄文ではありませんが、集落の境によく見られる百万遍の石碑がおもしろいですね。写真を撮りためたりしています。しゃこちゃん広場の近くにも明治39年の百万遍があるんですよ」
― そうですか…(←あまりピンときていない。)
「水虎様(すいこさま)もつがる市には多いです。地域の信仰に興味があります。あと、海にベンケイガイを拾いにいくんです。縄文時代、田小屋野貝塚にはベンケイガイのブレスレット工房があったと考えられています」
― あの、ちょっと確認させてください。ベンケイガイを拾いに、というのは、仕事としてですか? それとも…
「わりとプライベートで(笑)。漂着物に興味があるんです。シーグラスっていう、摩耗した、いい感じに丸くなったガラスとか」
― つがる市の海岸が格好の宝さがしスポットだとは知りませんでした。青森県内の学芸員さんはいろんな縄文グッズを持っているというイメージがありますが。
「グッズ、けっこう買ってますね。トートバッグ、ブローチ、マスキングテープ、Tシャツ。縄文の手ぬぐいを首に巻いて仕事をすることもあります」
― 木造駅ではいろんな「しゃこちゃんグッズ」が買えますよね。駅前の神武食堂はつがる市の職員にも人気だと聞きました。
「ジンタケ、出前でよく食べますよ。冷やし担々麺がおいしい」
インタビューを進めていたところ、近所のメロン農家さん(74歳)が登場。なんとご自宅と畑がそれぞれ亀ヶ岡と田小屋野貝塚の史跡内にあるとのこと。ニコニコしながら、次のようなお話を聞かせてくださいました。
・発掘が進めば、しゃこちゃんはあと5、6個は出てくるだろう。
・自分でも土器のコレクションを持っている。
・史跡なので畑をやめなければならなくなった。今年の収穫で最後。来年はもうやらない。家も引っ越す。さみしさはあるけど、仕方ない。
― メロン農家さん、とても明るくていい方ですね。
「発掘していると、毎日こんなふうに声をかけてくれるんです。応援してくれるので、ありがたいです」
― 個人で土器のコレクションを持っているというのは、この土地ならではですね。木戸さんから見た亀ヶ岡の魅力って、どんなところですか?
「調査研究の歴史が長いところが魅力ですね。江戸時代から珍しいものが出ることで有名で、しゃこちゃんが発見されたのが明治20年。これくらい歴史の長い遺跡って、ほかにはあまりないんです。現在までずっと、その時代ごとに、人々がこの遺跡に注目し続けてきたという、そのこと自体がすごい。だからこそ亀ヶ岡文化圏などと呼び名に『亀ヶ岡』が使われているんだと思います」
― 亀ヶ岡文化圏?
「東北地方を中心に、道南から新潟県の一部までが亀ヶ岡文化圏といわれています。縄文時代の晩期に似たような土器や土偶が作られていたエリアです。亀ヶ岡が古くから知られていたので、そう名付けられました」
― これからこの遺跡はどんなふうに変わっていくんでしょうか。
「整備に向けて動きはじめます。毎年、ちょっとずつ様子が変わっていくので、何度でも足を運んでほしいですね」
― 整備というのは、たとえば公園のような場所になるということでしょうか。
「そうですね。たとえば当時の暮らしがわかるような復元をしたり、訪れた方が遺跡の中を歩いて理解しやすいように環境を整えたりするイメージです。遺跡のちかくにガイダンス施設を建設する計画もあります」
― 楽しみですね。ところで、木戸さんはつがる市出身ですか?
「いいえ、出身は北海道です。じつは、つがる市の学芸員は4人中全員が県外出身者なんです」
― えっ!? それは衝撃的というか、意外な情報ですね。
「市内の児童・生徒には出前授業などで遺跡のことを伝えています。木造高校では地域経済と結びつけた活動もしてくれています。卒業して、つがる市を出る子どもたちも多いと思います。ただ、誰かの記憶の片隅に縄文やつがる市の歴史・文化がずっと残って、いつか学芸員として戻ってきてくれたらうれしいですね」
― 締めくくりにふさわしいコメント、ありがとうございます! 煙、消えましたね。蚊取り線香の。
「ほんとだ。新しいのつけないと」
― 今日は興味深いお話が聞けてよかったです。発掘がんばってください!
by エムアイ
亀ヶ岡石器時代遺跡 | |
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場所 | 青森県つがる市木造館岡 |
TEL | 0173-49-1194 |
FAX | 0173-49-1212 |
時間 | ー |
料金 | 無料 |
Webサイト | 亀ヶ岡石器時代遺跡 |
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