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【JOMONトーク Vol.8】2021年は仕上げの年じゃない!新しい楽しみ方を見つけていく世界遺産(是川石器時代遺跡・小久保拓也さん)

観光スポット 青森の人 | 2021-11-01 10:18

こんにちは!

今回は八戸市にある是川縄文館に行ってきました。

インタビューに応じてくれたのは、学芸員の小久保拓也さんです。是川石器時代遺跡の調査研究を引っ張っていくリーダー的な存在として活躍されています。

― 八戸駅や観光案内所に縄文の特設コーナーができていました。世界遺産登録をお祝いするムードが高まっていますね。

「そうですね。ちょっと前までは『ほんとうに世界遺産になるの?』と言われたりしていたのですが(笑)」

書体が気になって小久保さんに聞いてみたところ「開館にあたり、臨泉会の故佐々木月花先生に揮毫いただきました」とのこと。

― この連載をはじめて、青森県内の学芸員さんには県外出身者が多いということがわかったのですが、小久保さんは…

「出身は埼玉です。大学は東京でした」

― 卒業して、学芸員になったと。

「すぐには学芸員になれなくて。当時、今から20年ほど前ですが、学芸員の募集は少なくて倍率がすごく高くて。私の記憶だと千葉県や山梨県は数百倍だったような。そんなの受かるわけない(笑)。大学院まで行って研究した人もいっぱいいるのに」

― 恐るべき高倍率ですね。

「新潟の遺跡で嘱託職員として1年間働く中で、なんとか八戸市に採用されました」

― たまたまというか、めぐり合わせのような感じで八戸に来たわけですね。

「不思議な縁があったのかなと思います。先生や先輩からは『知っていると思うが八戸市にはすごい遺跡があるし、たくさん学芸員がいるし、行ったほうがいい』と応援してもらいました。あと、ぎりぎり本州だし(笑)」

シアターでは縄文人の1日を体感できる。「ナレーションは『鬼滅の刃』でも活躍している声優さんです」と小久保さん。

― 八戸市には学芸員さんは何人いるんですか?

「考古学を専門とした学芸員だけで15人です」

― けっこういますね。

「そうなんです。学芸員が1人だけという自治体も多くて、そういうところだと文化財以外の仕事もやらなきゃならない。働く環境としては恵まれていますね」

― 小久保さんが八戸に来た当時は、まだ世界遺産をめざすような話はなかったわけですよね?

「ありませんでした。ある日、県庁から私の上司に電話がかかってきたんです。『世界遺産をめざすので、説明しにいきたい』って」

― スケールの大きすぎる話を、そんな急に(笑)。

「こちらとしては『まさか(笑)』という感じで。世界遺産になるなんて、まったく想像がつかなった」

― そういうところからスタートして、実際に世界遺産になったわけですから、ほんとうにすごいと思います。是川縄文館といえば、なんといっても合掌土偶ですよね。あの土偶の管理は小久保さんが?

「はい。先輩から受け継いで、合掌土偶係をやっています」

― 係ですか(笑)。

国宝 合掌土偶

「先日、夜中に地震があったときも、飛び起きて、合掌土偶が無事かどうか確認しにきました」

― 重い責任をともなう係ですね。小久保さんは合掌土偶をどんなふうに見ていますか?

「あの土偶ね、難しいんですよね。出産に関連しているという人もいますが、私は出産に限らないかなと思っていて」

― もっと包括的な?

「そうですね、祈りの土偶ではないかと思います。合掌土偶にはすごく複雑な要素があるんです。ポーズを取っていたり、人体を意識したような造りになっていたり」

― たしかに土偶のわりには、腕や脚が人間にちかいですね。

「あと、女性を模したほかの土偶とはちがって、男性的にも見えたり。当時のムラの人たちの多様化した願いや、複雑な思いを背景につくられた土偶なのかなと思います」

― 表情も独特ですよね。ユーモラスなようでもあり、ちょっと怖いようでもあり。

「顔面は貼り付けたものだということがわかっています。仮面を意識して作っているんです。習俗とか、マツリの表現ではないかと思います」

「みなさんいろんな思いを抱くようですね。『自分に語りかけている気がする』とか『背筋がぴんとなる』とか。現代人にも訴えかけるような、特別な魅力があるんだと思います。私は、研究対象としてみていますが(笑)」

― 合掌土偶の履歴書も展示されていますよね。情報がまとまっていて、すごくわかりやすいです。

合掌土偶の履歴書

「これには元ネタがあって。他県の博物館に土器の履歴書があったんです。いちおうその博物館に『パクっていいですか?』と相談しました(笑)」

― ストレートですね(笑)

「合掌土偶についてはいろんな質問を受けるので、履歴書を作ってよかったです。是川縄文館の展示って、あまり解説がないんです」

― あえて、ですか?

「はい。美術品のように見てほしいというコンセプトなので、解説はあえて少なくして、展示品のすぐそばに置かないようにしています」

美術品のように見てほしいというのが是川縄文館のコンセプト。「ライトの当たった展示品を、じっくり見てほしいですね」と小久保さん。

― 頬杖土偶も人気がありますよね。

「あれ人気なんですよね。雑誌の表紙にも採用されました」

ダイナースクラブ会員誌『SIGNATURE』2021年7月号

― 土偶のほかに小久保さんのイチオシはありますか?

「ぜひ見てもらいたいのは、漆製品です。高度な精神文化のもと、自然の資源をうまく活用してつくられたものです」

― とてもきれいに残っていますよね。

「そうなんです。国内でも有数の展示だと思います」

保存状態のいい漆塗り土器

― どんなときに使われていたと、小久保さんは考えていますか?

「やはり特別な日でしょうね。マツリとか、儀式とか。発掘された約2,000点の土器のうち、漆が塗られているのは4%だけなんです」

― 漆って、すごく手間がかかるイメージがありますが。

「手間、かかりますよね。漆の木って、葉がつくのがいちばん遅くて、葉が落ちるのがいちばん早いんです。漆を生成するまでにはいくつもの工程があって、温度や湿度にも気をつけないといけない。それを狩猟採集の合間にやっていたわけです」

― 是川では地域の人たちを巻きこんだり、他分野とコラボしたりしていますよね。

「是川考古学クラブというのをやっていて、小学校4年生から中学校3年生までの児童・生徒が参加しています。みんな縄文に詳しくなっています。最近は定員を超える応募があります。将来学芸員となって、一緒に仕事ができたら嬉しいですね」

「千葉学園高等学校とは、ファッションの分野でコラボしています。弘前のファッション甲子園で縄文がテーマになったのがきっかけです。八戸ポータルミュージアムはっちでは、アーティストが滞在しながら制作に取り組んでいて、縄文をテーマにされた方もいます。八戸ブックセンターとの共同企画の計画も進んでいます」

是川縄文館の土器をモデルとしたドレス(千葉学園高等学校の生徒が制作)

― なかなか手広く展開していますね。

「研究は大事な柱で、それは学芸員がしっかりやっていく。それ以外は楽しくわかりやすく、というスタンスでやっているつもりです」

― 読者の皆さんに一言どうぞ。

「ぜひ遺跡に来て、見てもらって、縄文に興味を持っていただけたらうれしいですね。…なんかふつうですね(笑)」

― ふつうですね(笑)

「…難しいなあ(笑)。なんだろうなあ…。縄文はまだ謎だらけで、是川も全貌がつかみきれていないんです。そんな謎だらけの縄文の楽しみ方を、みんなで見つけていけたらいいなと思いますね」

― これからの抱負は?

「世界遺産になって、こういう取材も増えて、自分が是川に関わってきた20年を振り返ることが多くなったんですけど、まだまだこれからだと思っています。2021年は仕上げの年じゃないんです。中間管理職としての仕事も大変ですが(笑)、やりたいことはたくさんあるし、できることもたくさんあると思っています」

― 小久保さん、ありがとうございました! 今後の展開も楽しみにしています。

by エムアイ

八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館
場所青森県八戸市大字是川字横山1
TEL0178-38-9511
FAX0178-96-5392
時間9:00~17:00 入館は16:30まで
料金個人/一般250円 高校・大学生150円 小・中学生50円
団体/一般130円 高校・大学生80円 小・中学生30円
Webサイト埋蔵文化財センター是川縄文館
その他休館日
月曜日(祝日・振替休日の場合は開館)、祝日・振替休日の翌日(土・日曜日、祝日の場合は開館)、年末年始(12/27~1/4)、その他臨時休館日

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