今回は、つがる市で40年以上にわたって焼き物をつくりつづけている、一戸広臣さんにお話をうかがいました。
― つがる市の2つの史跡(亀ヶ岡石器時代遺跡・田小屋野貝塚)が世界遺産になって、しきろ庵がますます注目を集めていますね。新聞などで何度か見かけました。
「マスコミの影響力はすごいもんだなと思ったね。こないだキャンプに行ったときさ、そこの管理人なのかな、見まわりをしてるおじいさんがいて、おれの顔をじーっと見つめるわけ、それからまっすぐ指さして『あんだテレビさ出はっちゃあべ!』って(笑)」
― すっかり有名人ですね。
「サインほしい?」
― いえ、大丈夫です。
「最近はよく『テレビ見たよ』とか『有名人だね』とか言われる。『いやぁそんなんじゃねえよ』って言うんだけど、まんざらでもないわけ(笑)。やっぱりわるい気はしない」
― 世界遺産になったという実感はありますか?
「取材が多くなったりはしたけど、実感というのは…。生活は変わらないね。今までずっとやってきたことを、これからもやりつづけるだけ」
― クールですねえ。
― あえて直球の質問をしますが、一戸さんにとって、縄文とはなんですか?
「…飯のタネ」
― わりきってますね(笑)!
「うん、商売としてわりきってやってる。縄文を商売にしてるなんてバチあたりな話でさ(笑)。とんでもないやつなんだよ」
― いやいやそんな(笑)。是川縄文館の小久保さんが、合掌土偶をあくまでも研究対象として見ていると言っていました。共通するものを感じます。
「仕事としてやってるわけだからね。その感覚はわかるよ」
― 一戸さんは遮光器土偶をどんな視点で見てるんだろうと、前から気になっていました。遮光器土偶のすごさ、おもしろさについて聞かせてください。
「遮光器土偶はほかの場所でも出てるけど、やっぱりうち(つがる市)のはダントツだと思う」
― ダントツというのは、たとえば技術力などでしょうか。
「そうだね。バランスといい、文様といい、技術力の高さには感心する。完成度がものすごく高い。極限だと思う」
― 遮光器土偶をつくるとき、一戸さんはどんなことを考えてるんですか?
「なんにも考えてない…」
「…いや、考えてないことはないか。型のものは量産するからあれだけど、手づくりの土偶は、いろいろ考えるというか、悩むね」
「あの土偶ってさ、つくった本人がそれなりに手を抜いてるわけ。模様が完璧に左右対称じゃなかったり、目も片方がすこし小さかったり。いい意味で下手というか。おれはプロだから腕には自信があるわけ。本物の下手さ加減を真似るべきか、それとも完璧に、目も模様も左右対称につくるべきか、葛藤はつねにあるね」
― たしかに本物の遮光器土偶には、現代の私たちから見ると完璧とはいえない部分もありますね。
「きっちりやれよ! と思う(笑)。まあ、おおらかなんだろうな。とにかく家族が健康で、食べ物がたくさんとれて、子孫が繫栄すればよかったわけでしょ。そういうことを祈るための対象物としてこの土偶があったんだろうと思うよ。おれみたいに売ってお金をもらうわけじゃないから、完璧じゃなくたってね。もしおれが見えないところで手を抜いたりしてたら、お客さんに怒られちゃうよな。『こんなもの置いておけるか』って(笑)」
「こないださ、テレビ番組に出演した関係で、遮光器土偶をズームアップして見たり、空洞になってる内側を見たりする機会があったわけ。おれさ、足の裏がどうなってるのか、前から気になってて。展示してるときは、足の裏って見えないじゃない。で、見てみたらさ…」
― どうでした?
「へこんでたの。足の裏が」
― ということは、つまり…
「足をあとからつけたってこと。押してくっつけたから、へこんでるの。それがさ、おれのつくりかたと同じなんだよ。胴体をまずつくって、あとから足をくっつける」
― こないだアスパム(青森県観光物産館)に行ったら、しきろ庵の商品のコーナーができていました。
「ありがたいことだよね。アスパムのほかに、青森空港、三内丸山遺跡の北彩館、木造駅の中のお店、しゃこちゃん広場に新しくできた『しゃこちゃんショップ』にも置いてる。あとは縄文館にも」
― しきろ庵は、つがる市を訪れた人にぜひ立ち寄ってほしいスポットです。読者の皆さんに伝えたいことはありますか?
「そうだね、せっかく遠いところからつがる市の遺跡を見にきたんなら、うちにも寄ってほしいよね。ここにしか置いてない商品もあるしさ。商品も竪穴住居も、見るのはタダだから(笑)」
― 一戸さん、ありがとうございました!
by エムアイ
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Webサイト | 津軽亀ヶ岡焼しきろ庵 |
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