まるごと青森

【JOMONトーク Vol.10】ものづくりを通して縄文の精神をさぐる(佐京窯・佐京三義さん)

特産品・お土産 観光スポット 青森の人 | 2021-11-29 10:40

岩手との県境にある階上町(はしかみちょう)に、佐京窯という工房があります。今回登場していただくのは、この土地で生まれ育った佐京三義さんです。「縄文の美を現代によみがえらせる」をコンセプトに、土器や土偶をつくっています。

佐京窯のギャラリー入口
ずらりと展示されている作品。「猫を飼ってるけど、土器にぶつかることはまずない」と佐京さん。

― 佐京さん、どれもすごくきれいですね。土器の模様といい、土偶といい、縄文時代晩期のものが多いような。

「そうそう!やっぱり晩期がいいんだよね」

― どうしてですか?

「ただ好きだっていうだけよ(笑)。晩期の複雑な模様にほれたんだよね。これは現代に生かせると思って」

― 現代に生かせるというと?

「たとえばこないだはさ、種差海岸のグランピングのイベントに呼ばれて。そのときは服に絵をかいたんだよ、晩期の模様の。もちろんコーヒーカップとか、現代のふだんの生活で使うものにかいたりもできる」

カラフルな作品も制作している。

「土器の模様って複雑そうに見えるけど、ちゃんとパターンがあるわけ。人から人へ、何百年もかけて受け継がれていったんだと思うよ。お母さんがつくってるのを子どもが見ておぼえたりしたんじゃないかな」

模様の描きかたをノートにまとめている。

― このイラストを参考にすれば、自分でもなんとかかけそうな気がします。

「かけるかける! 簡単」

― そこまで簡単そうには見えませんが(笑)。こうした模様には、それぞれ意味がありそうですね。佐京さんはどんな解釈をしていますか?

「模様の意味ね…いろんなことが想像できるけど、はやりなんじゃないかと思う」

― はやり?

「といっても時間の流れはいまよりずっと緩やかだからね。ゆっくり伝わってく」

― 遮光器土偶のデザインも…

「うん、同じ。はやりじゃないかな。はやった期間は、たぶん500年間とか、ある程度長いスパンだと思うけどね」

この土器は薪ストーブで焼いたとのこと。「縄文人も、竪穴住居の炉を使ってたんじゃないかな。野焼きだけじゃなく」と佐京さんは推測する。

― 土偶には板状土偶とか、合掌土偶とかいろいろありますが、やはり晩期の遮光器土偶にいちばんひかれますか?

「ひかれるっていうか、つくってみたかったわけ。あれがいちばん難しい。究極に難しい。中は空洞で、薄い。模様も複雑。指も入らない」

― 難しいからこそ、つくってみたかったんですね。

「あれがつくれたら、縄文をもっと理解できるんじゃないかと思って。縄文時代のことは想像するしかないわけだけど、模様を描くっていう体験を通じて、その精神のことが少しでもわかるんじゃないかって」

― 実際に同じものをつくって縄文人の精神をさぐるというのは、アプローチ方法としてかなり興味深いです。

「そうすることで『想像の縄文』が『実際の縄文』にちかづくんじゃないかと思ってね。自分のなかに縄文スピリッツが入りこんでくればいいな(笑)」

シカの角でつくった作品

― どれくらい長く制作をつづけているんですか?

「20年やってる」

― …すごく長いというわけではないですね。ちょっと意外です。

「もと潜水士だから」

- 潜水士! それはすごい経歴ですね。

「ここで生まれ育って、潜水の高校を出て、潜水士になったわけ。それからはもう、日本全国まわって、海外にも行った。1年半、スエズ運河の拡張工事をやったり」

- なんだかすごい話です…。世界で活躍する潜水士が、どうして地元に帰って土器をつくりはじめたんでしょう。

「仕事がハードでヘルニアになったの。40歳の手前くらいのとき。仕事をやめたら暇でさ(笑)、是川に遊びにいったら土器づくり教室をやってて、それに参加したらけっこうハマった」

- そこが転機だったわけですね。

「是川のボランティアガイドもやった。人生80年だとしてさ、最初の20年は勉強じゃない? で、そこから20年、40歳まで働いてるじゃない? だったら、40歳からなにかをはじめれば、もう1回、人生を楽しめるんじゃないかと思って」

- 縄文のどんなところに魅力を感じますか?

「暮らしぶりにあこがれるってのがいちばんだね。自給自足の、サステナブルな生活がいいね。自然を守らないとできない。縄文人はそれをうまくやってた」

- 自給自足の生活へのあこがれは、子どものころから?

「そうだね。ロビンソン・クルーソーが好きだった(笑)」

「いまの人も縄文人と同じことやってるでしょ。キャンプなんかはまさにそうだよね。自然のなかで料理つくって。テントは簡易的な竪穴住居だよ。魚釣りだって縄文人と同じ。きのこ採り、山菜採りも。家庭菜園もそう」

「ただ縄文は、衣食住ぜんぶ手づくり。生活の道具をつくったり、自然に対応したりする力は、うちらよりはるかに上だから。縄文人は大先輩だね」

- SDGsへの関心が高まっているタイミングで、縄文が世界遺産になりましたよね。

「そうなんだよ! 縄文とSDGsとをいっしょにして考えていけたらいいと思う。循環型の生活みたいなことをね」

今日はおもしろいお話を聞かせていただき、ありがとうございました。とても勉強になりました!

by エムアイ

佐京窯
場所青森県階上町大字道仏字泉田窪20-3
TEL0178-87-3916
FAX0178-87-3916

掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。

青森の観光・物産・食・特選素材など「まるごと青森」をご紹介するブログ(blog)です。
青森県で暮らす私たちだからこそ知っている情報を県内外の皆様に知っていただく記事をお届けします。

タグ別記事一覧

グルメ弘前公園陸奥湾おやき焼き鳥グランピング#エビの釣り堀食堂ブナコ弘前城フェリー三社大祭日記雪見温泉月見#釣りヒバ津軽八甲田尻屋埼灯台館花岸壁朝市ポップアナログレコード#手帳鉄道青森岩木山尻屋埼宵宮横丁露天風呂青森県、色彩#桜りんご三内丸山遺跡白神山地毛豆寒立馬美術館最強毛豆決定戦妖怪#食ねぶた・ねぷた奥入瀬渓流絶景太宰治灯台青森土産きのこ鮟鱇JOMONトーク伝統芸能果物山菜・きのこウニ温泉ジオパーク津軽土産アニメあんこう万年筆えんぶりカフェ・レストラン米・パン・穀物津軽海峡自転車ガイドパッケージ買いクラフト風間浦鮟鱇ステンドグラス建物お酒寿司白神山地周辺津軽弁金魚イベントハンドメイド#郷土料理#青森グルメラーメン野菜居酒屋・バーカレー缶バッジおにぎり海藻唐揚げ#お家ごはん中華料理スイーツ魚介種差海岸まつりカンバッジうにぎりわかめ和栗インバウンド#料理エビチャーハンまち歩き肉・卵十和田湖アクティビティおみやげ岩のりe-sportsスタンプお家でシリーズBUNACO白神山地体験レポート伝統工芸田んぼアートマグロお土産津軽弁缶バッジ寒海苔お盆スーパー植物#だし青森県郷土料理三味線ご当地蔦沼寺山修司カフェ迎え火・送り火ハンコ担々麺#アートアウトドアツアー歴史・文化紅葉新緑八戸ブックセンターコーヒー嶽きみコケシ辛い#青森県立美術館自然アートランチライトアップイルカプリン熱帯魚クリスマス種差#自然

まるごと青森Facebookページ始めました。
登録がある方はもちろん、ない方も登録して下記ページで「いいね」のクリックして、まるごと青森ブログともどもご愛顧をよろしくお願いいたします。
まるごと青森FBページ

月別記事一覧

月別一覧ページへ