このところ津軽の伝承料理が、“一周して新しい”と見直されていますが、それに感化されたのか、最近、青森県の昔の主食事情が妙に気になりまして、いろいろ調べるうちに県内の産直店で買ってしまったのが、コチラ、「粟(あわ)」と「ひえ」です。
明治時代から大正初期にかけて、青森県の日常の食事は米に何らかの穀物を混ぜ合わせるのが基本だったようです。津軽半島は、米のとれる比較的暖かい気候だったことや新田開発が進んだこともあり、米だけを主食としていた事例も多いです。一方、南部地方、下北地方は、夏の冷たい「ヤマセ」でも栽培できる「粟」(あわ)、又は「ひえ」を米に混ぜていたとする事例が多く、こうした混ぜたご飯を「カデ飯」と呼ばれていたそうです。ちなみに、粟とひえの両方を混ぜる事例はあまり多くありません。
「カデ飯」の語源は、”かでる”(加える)ものであることから、また「ひえ」は、「冷えに強い」ことからそのように名づけられているようです。
当時の食事について、文献には、
・南部の人たちは、干し菜汁とひえ飯を、”医者殺し”といい、健康にたいへんよい組み合わせであることを知っていました
・新鮮ないわしの焼きたてには、粘っこい白米飯より、ほどよくぱっさりしたひえ飯のほうがはるかにおいしい
とあり、おかずとの取り合わせの妙も知っていたようです。「とろろをかけると食が進む」とも。
調べてみると、粟は、「古事記」にも登場するほど栽培の歴史は古く、鉄分、亜鉛なども豊富でビタミンB1・B2は精白米の2倍だそうです。また、ひえも、粟と共に日本最古の穀物で、縄文時代から食用とされており、食物繊維が精白米の8倍以上、ミネラルもバランスよく含まれているそうです。健康志向の方にぴったり。
ますます気になる粟とひえ。
そこで、今回は「ひえ」にスポットをあてて、南部地方の”再現めし”を作ってみました。
作ったのは、先ほどの文献にあった、カデ飯(米50:ひえ50)、いわしの塩焼き、とろろ、菜っ葉と豆腐の味噌汁。
食べたところ、カデ飯は粘り気がなくあっさりとしていますが、いわしやとろろと本当に合います(こんなに美味しく感じたのは、米が当たり前に手に入り味に慣れてしまったため、新たな食味と感じたことも部分的にあったのからなのかもしれませんが)。全然また食べたいです。
そして、これに調子づきまして、今なら「カデ飯」をどんな風にして食べるかな?と思って閃いたのが、スパイスカレー。インド米もパさっとして汁気の多いカレーに非常に合いますから、それならと、飯(米75:ひえ25)のイエローライスを作ってみました(黄色はターメリック)。
ほんと、インド米にも似た風味で、カレーに合います。旨いです。周りの人にも食べさせたのですが、全員から「普通のご飯より、こっちのほうが合うし旨い」との反応。チャレンジだったのですが、狙い通りになって嬉しいです。すごいぞ、ひえ。
私の買った粟やひえは、150gで550円程度と、今では高級品となっています。それでもたまには青森県の食文化に思いをはせながら、日々の食生活にアレンジを加えて楽しんでみるのもよいのではないでしょうか?
次は何を作ってみようかな?
By トド松っつぁん
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