「修行と食とアート」
みなさん、こんにちは。フリーランスの編集者でモノ書きのヤマザキマユコです。
いよいよ、ミステリーハンター宮地眞理子さんと小説家畠山健二先生による第3弾・最終回に。この旅であらためて、「青森は濃く、深かった。また行きたい、体験したい」とおっしゃる師弟のおふたり。〆を飾るテーマは『修行と食とアート』。果たして、いったい、どう展開するのか!?
ミステリハンター
宮地眞理子(みやち・まりこ)
1978年神奈川生まれ。女優、タレント、エッセイスト。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンターとしても活躍。著書に『地球のふしぎを歩こう 行ってきました! 世界の「絶景・秘境」』(PHP文庫)がある。
小説家
畠山健二(はたけやま・けんじ)
1957年東京生まれ。大学卒業後、家業の鉄工所に勤めるかたわら笑芸作家として数々の演芸の台本執筆や演出を手がける。2012年、『スプラッシュマンション』(PHP研究所)で小説家デビュー。翌年から『本所おけら長屋』(PHP文芸文庫)をスタート。最新刊である十八巻を刊行し累計150万部を突破。月刊『旅行読売』でエッセイを連載中。また小説家・山口恵以子さんとの共著『猿と猿回し』(内外出版社)がまもなく発売!
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はじめにお詫び申し上げます。この取材は11月下旬のこと。そして記事が公開されたのは4月。すみません、ひとえに私(ヤマザキ)の怠慢です、ごめんなさい。
今はうららかな気候ですが、取材時は真冬! たとえ修行といえども、これほどまでに寒い時期に“滝に打たれる”なんて正気の沙汰ではありません。
なのに、なのに……トライした畠山先生のレポート、そして眞理子さんの心の声をご覧ください。
石神神社/御鈴大滝(青森市)
レポート=小説家・畠山健二
「滝行ができるんですよ!」
「へえ~、おもしろそうだな。行ってみようよ」。
そんなノリで石神神社に向かった。われわれを乗せたクルマは舗装されていない山道に入り、ひたすら奥に進んで行く。谷底に落ちたら最後だ。
「もう、引き返そうよ」と言いかけたとき、石神神社が見えてきた。鳥居をくぐり90段の階段をひたすら上る。参拝をした後、社務所で神社の方に挨拶をすると、滝行用の白装束を貸してくれた。
「本当にやるんですか? もう寒いですからねえ……」
「まあ、撮影なんで格好だけはしておこうかと……」なんてやりとりをして着替えた。たった一枚の帷子(かたびら)だ。寒いってもんじゃない。引き返すなら今だ。
だが、滝に向って山道を下り、そして緩やかな階段を降りてゆく。
徐々に水の音が近づいてくる。
そして、御鈴大滝があった。高さは15メートルほどだろうか。不思議なもので滝を見つめていると心が落ち着いてくる。
「眺めるだけでいいですからー」と同行のスタッフが声をかけてくる。
なのに、足が自然に滝に向って動いてしまう。神が宿っているからだろうか。
当初、“真似”をするだけだった。トライしたものの怖気付いてあきらめた。そんな設定をしていたハズだ。それなに……オレの足は滝に向かっている。
宮地眞理子が、「ホントにやるんですか! 先生、凍死しちゃいます。お願いだからやめてください~!!」と懇願してきた。叫んでもいる。
だがオレは気がつくと滝の下に入っていた。
冷たい。冷たいってもんじゃない。
だが、どうだ、平気だ。
カラダと心が浄化されていく気がした。
手を合わせたが、願うことは頭に浮かばなかった。
無心になれたってことかもしれない。
(ミステリーハンター宮地の心の声)
神社を取り巻く空気は澄んでいて、気持ちが落ち着きます。 そして御鈴大滝には神が宿っていると確信しました。先生がなんの躊躇もなく滝の下へ吸い込まれて行ったからです。 滝行を終えたお姿もなんだか違ってみえる! ぜひ定期的に通って浄化されて下さい、先生!
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真冬の滝行を完遂した畠山先生は、これまでに見たこともないほど清らかな表情をなさっている。前日は雨(ときに雪)が降ったにも関わらず、当日はカラッと快晴。さらには、【ミステリーハンター&小説家コンビ】を讃えるように、滝への道程には光がさしたほど! でも、本来は“夏が相場”の滝行です。凍てついたカラダを温めるべく、一行は昼食タイムへと。
サッポロラーメン専門店 かわら(青森市)
レポート=小説家・畠山健二
「ご当地ラーメンが食べたい!」
そこで、われわれが向かったのが「サッポロラーメン専門店かわら」。
青森なのに札幌である。当地ならば青森ラーメンじゃなきゃダメだろう? と思うが、なんでも札幌から到来した味噌ラーメンが青森の地で、独特のご当地グルメに進化したというのだ。
狙うのは「青森味噌カレー牛乳ラーメン」だ。私は納豆、宮地眞理子はコーンをトッピング。
まずはスープから。味噌とカレーと牛乳の相性は抜群だ。そこに納豆が加わると……。おお、これが意外としっくりしている。麺は中太でバターが溶けてくると、味に深みが増す。量もたっぷりで満腹だ。
評価したいのが店内の清潔さ。カウンターも厨房もピカピカでケチのつけようがない。
「キレイ好きなんですね」と店長の石村さんに話かける。「ええ」と言葉少なに答えてくれた。
(ミステリーハンター宮地の心の声)
味噌カレー牛乳ラーメン!? なんとなんと器の中で変わり種ラーメンが一堂に会している! どれかが邪魔しそうと思いましたが、「意外としっくり」と先生がおっしゃったように、すべての味わいが手を繋いでまとまっているのです!
絶妙なバランス! 食べ進めるともうひと口、もうひと口とどんどんクセになります。訝しかったのは一瞬、あっという間にペロリといただきました。
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複数の現代美術館を有する青森県は、今、“アート好き”にも注目の的。難しい知識がなくとも、素直に心揺さぶられる作品と見せ方に好奇心がそそられるはずです。
「すべて巡りたい」と逸る気持ちを抑えて……今回は八戸市美術館と十和田市現代美術館を訪問しました!
青森県は“アート県”!?
レポート=小説家・畠山健二
八戸市美術館では開館記念「ギフト、ギフト、」を開催していた(2021年11月)。ギフトとは贈り物の包み紙のことだろうか?
学芸員の大沢苑美さんによると、「贈る→受け取る→お返しをする。世の中にはこの循環によって成り立っていることが……」とのこと。
なるほどなぁ。その循環を“ギフト”と表現しているのか。
もちろん品物だけではない。
「思いやり」や「優しさ」も循環なのだろう。納得だ。
この美術館の特徴は、作品が「地元の人々」だということ。日常の何気ない表情や仕種がそのまま芸術作品として描かれている。心が温かくなる美術館だ。
そしてもうひとつ、十和田市現代美術館へ。広場に設置された立体作品群が楽しく、思わず童心にかえって宮地眞理子と大撮影大会となってしまった。
こちらは十和田市現代美術館。美術館の外にも絶好の撮影スポットが!(ミステリーハンター宮地の心の声)
ただいま通信制美術大学で絶賛学び中の私にとって、ワクワクが止まらない場所、それが美術館です!
「八戸市美術館」のエントランスには優しい光がさし込み、気軽に楽しんでいってね~と言われている気がします。先生もおっしゃっていますが、まさに心が温かくなる! 広い空間では展示だけではなく、さまざまな体験もできるそう。たくさんの人々が交流する場所になっていくんでしょうね!
「十和田市現代美術館」は、美術館そのものだけでなく、周囲もアートで埋め尽くされています。子どもたちが広場で遊んでいましたが、小さなころから自然とアートにふれていると感性が豊かになるだろうなぁ~。
先生と私は、ハシャギまくっているだけでしたが(笑)。
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【ミステリーハンター&小説家】による青森探訪珍道中レポートの大団円を飾るのは結局!? 「青森の旨し味」でした。
しみじみ実感するのは、やっぱり「人との、いい出会いがあってこそ料理も酒も旨くなるってこと。その土地を知る、はじめの一歩であり、〆にふさわしい美味どころをご紹介いたしましょう!
みなと食堂(八戸市)
八戸でおさえておきたいグルメスポットが港町にある「みなと食堂」だ。
お目当ては噂の平目漬丼……。うわぁ~! 店の前には20人ほどの行列が。人気店の証だ。
待つこと40分。店内はカウンターに7人。テーブル席に5人とこぢんまりしている。登場した丼には平目がぎっしり。生卵のキミはアクセントだ。特徴は漬けすぎていないこと。素材が持つ味を大切にしているんだなあ。地元でしか味わうことができない美味に感動。
大将に尋ねてみた。
「このタレの作り方は門外不出ですよね?」「でも、訊かれれば教えるよ。醤油と酒とみりんとね……」やっぱり、この味は人柄がつくるんだよなあ。
(ミステリーハンター宮地の心の声)
八戸に来たら食べない人は居ないのではないかと思うくらい、最高の丼が待ち構えております。ま、眩しい!もはや平目が輝いてみえました。郷土料理であるせんべい汁も合わせて頂くことを強く、強くオススメします! 味にもお店の雰囲気にも、大将はじめ店員さんのお人柄がギュギュギューーです!
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郷土料理 六兵衛(青森市)
「青森市内で渋い居酒屋なはいでしょうか?」
青森の知人が紹介してくれたのが六兵衛。
地下へと続く階段の上にある看板には「たる酒と貝焼」と書かれている。すでに渋さは伝わってきます。座敷に腰をおろして、注文したのが「たらたま」。干したタラに卵のキミを混ぜていただきます。宮地眞理子評は「こりゃ、酒の肴として最高ですよ!」だと。まったく食レポになっていない。酒を基準にしてしか語れないようだ。そして「ホタテの貝焼き味噌」そして「タコのから揚げ」「アジの味噌たたき」「なめこ酢」と続く。どれも絶品だ!
(ミステリーハンター宮地の心の声)
ホタテの貝焼き味噌をはじめていただいいたのに、「あれ? 私この味、知ってる!!とびっくり!」。じつは祖父が津軽地方出身なので、祖母がつくる「卵味噌」というこれに似た料理を小さいころから食べていたのです! うわーー、勝手にルーツに辿り着いた感じ! こういう味に育てられたから、お酒好きになったのかしら。 先生、酒を基準にしてしか語れない理由がわかりました(笑)
構成と撮影=山﨑真由子
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