芸術の秋ですね。
現在、八戸市の街かどミュージアムで開催されている「旅する絵師(11月13日(日)まで開催)」を観るために八戸市に行ってきました。
こちらのミュージアムは2012年4月の開館以来、浮世絵などの伝統木版画、八戸ゆかりの鳥瞰図絵師吉田初三郎の作品や懐かしの映画ポスターなどの収蔵作品の展示を行なっており、観る人にとって、気軽に「鑑賞」を楽しむ場として、時にはしみじみと味わう機会を提供できるよう、美術作品に馴染みやすい環境で展覧会を開催しています。
今回の展覧会では、大正〜昭和にかけて、同じ時代に生き、日本中を旅して風景画を描いた川瀬巴水と吉田初三郎の作品を中心に展示しています。
川瀬巴水(1883〜1957)は、浮世絵師で、版画家です。衰退した日本の浮世絵版画を復興し、新しい浮世絵版画である「新版画」を確立した人物で、その伝統木版画の技術をもとに、日本人の原風景を感じさせる作品を描き「旅情詩人」と言われた絵師です。
写真の左は「十和田湖千丈幕(昭和8年)」で、手前に黄色く色づいたブナを配し、紅葉に染まった十和田湖の千丈幕を湖面に写し、そこに浮かぶ一艘の小舟が景色の中に溶け込んでいる様子が描かれています。
実際に、版画に近づいて目を凝らして見ると、その繊細と美しさは息をのむほどで、細部にまでこだわって仕上げられた画は、素人である筆者にも本当に素晴らしい作品であることが理解できるほどでした。
そして、吉田初三郎(1884〜1955)は、近代鳥観図という独自の画法で、日本中の観光名所を描き、種差海岸に別荘兼アトリエを築いた、八戸市にゆかりのある絵師です。
鳥瞰図は、その字のとおり、大空高く舞い上がった鳥が地上を見るとしたなら、こんなふうに見えるだろうというふうに描かれた地図です。
京都生まれで、幼い頃から絵が好きで、友禅の織物図案の職工を経て、洋画家を志して関西美術院長の鹿子木孟郎に入門しますが、商業美術家への転身を勧められ、最初に描いた鳥瞰図「京阪電車沿線名所図絵」が、のちの昭和天皇の賞賛を受けたことから、パノラマ構図で左右を大胆にデフォルメした独特の絵図を製作するようになりました。大正から昭和にかけて、日本の観光ブームによって初三郎の鳥瞰図の人気は高まり、鉄道開業50周年を記念して刊行された『鉄道旅行案内』を機に全国各地の鳥瞰図を執筆しました。
八戸市から依頼を受け、昭和7年8月に市内を踏査・写生中に種差を訪れた初三郎は、「ここは日本八景の『室戸岬』や東洋一の景勝地と言われる『海金剛』にも勝る日本一の海岸美」と称し、「陸奥金剛」と命名しました。その後、名勝地指定運動を行い、「種差海岸」は昭和12年に国の名勝地に指定されました。
館内には、戦前と戦後の4枚の八戸市の鳥瞰図が展示されているほか、実際に彼が鳥瞰図製作の際に該当地の風土や歴史を事前に調査したという記述があり、当時の絵はがきが展示されています。
初三郎の鳥瞰図の特徴は、優れた旅行案内図であるだけでなく、踏査で得られたそこに住む民衆が感じている地域の特徴や文化までも画の中に描き込もうとしていることにあり、実際に描かれている場所や建物にとても親近感を感じます。
初三郎は、昭和7年から3年かけて種差に、住居・アトリエ・応接室を建設し、「潮観荘」と名付けました。昭和11年からはそこを活動の本拠地とし、家族や弟子とともに移住して戦中・戦後の画業の拠点としました。
ミュージアムに展示している作品はとても素晴らしく、鳥瞰図を眺めていたら、初三郎が愛した種差海岸を久しぶりに行ってみたくなりました。
というわけで、早速、種差海岸にやって来ちゃいました。
少し曇っていますが、とても良い眺めですね。
めっちゃ気持ちいい〜!
先ずは、種差海岸インフォメーションセンターの中にある初三郎の鳥瞰図を見てみたいと思います。
中に入って、受付に行くとカウンターの上にあります。
実際に鳥瞰図を見ると、感動しますね〜。とてもキレイです!
続いて、火事で焼失した「潮観荘」跡に行ってみました。
インフォメーションセンターからは2〜3分の所にあって、目印となるのはJR八戸線「種差海岸駅」です。
振り返ると、民宿石橋があり、その手前に「吉田初三郎 邸宅跡」の案内看板があります。
そこを歩いて少し登っていくと、見えてきました。
左の場所に建物跡があり、右に案内看板があります。
左下の写真をみると、この場所は高台にあって、種差海岸を一望できていたことが分かります。
当時は、松がこんなに高く生い茂っていなかったので、建物の2階からはとても見晴らしが良かったことでしょう。
いや〜、それにしても、眺めが良くて、最高ですね〜!
潮館荘跡からの景色も見られてとても満足したのですが、せっかくなので、この近くの種差観光協会に、潮館荘の模型が展示してあるというので見に行ってみました。
その前に、お腹が空いたので、波高食堂に寄って昼食を食べました。種差に来たのだから、ここはやはり名物の「磯ラーメン」を食べることとし、「ミニ磯丼」もプラスしました。
ウニ、カニ、エビ、、、が入って、スープが格別にうっまいですね〜!
お腹を満たしたところで、種差観光協会へ。
建物の中に入ると、、、ありました!
これは八戸工業大学第一高等学校の生徒さんが製作したものだそうです。
写真で見る潮館荘より、かなり立派な建物で、まるで豪華な旅館のようですね。
模型の他にもたくさん写真が展示してありました。
筆者はここで「八戸市鳥瞰図復刻版」を購入しました。
この他にも、初三郎が描いた「Beautiful Japan」のポストカード(欧米でその後の日本のパブリックイメージ形成に重要な役割を果たした「フジヤマ」「サクラ」「ゲイシャガール」を描いたもの)を購入しました。
買い物もできて、大満足できましたが、せっかくなので、“種差つながり”で、多くの文学者や芸術家に愛された種差海岸のスポットを紹介したいと思います。
ここからは、「種差海岸散策ハンドブック『花の渚。』」を参考に紹介していきます。
最初は、作家・文学者司馬遼太郎です。
昭和12年に名勝地に指定されたのちに種差海岸を訪れた際、「どこか宇宙からの来訪者があったら一番先に案内したい海岸」と表現したと言われています。
続いて、画家東山魁夷です。
戦前・戦後に種差海岸を訪れ、代表作の一つ「道」を製作しています。県道脇に記念碑が建てられています。
そして、詩人草野心平です。
種差海岸を何度か散策し、詩「種差海岸」という作品の中で、洋上に浮かぶ満月を”ザボンのような満月”と表し、その美しさを讃えています。
多くの文化人たちが訪れた足跡を辿ってみて、改めて思うことは、種差海岸は自然が織りなす海岸美に恵まれた風光明媚な景勝地であるということです。
さて、美しい種差海岸の景色を堪能した後は、ホロンバイルで休憩でしょうか。
やっぱり、うまい〜!
スイーツも堪能し、帰りたいところですが、最後にもう一つ立ち寄りたいのは、宮沢賢治が「八戸」という文学詩の中で風景を描写した鮫駅です。
2011年には、写真右のサメの頭の部分が設置され、口の中から顔を覗かせて写真を撮る記念スポットになっています。
というわけで、長々と紹介してまいりました「吉田初三郎が愛した種差海岸」、いかがでしたでしょうか?
もし良ければ、時間の許す限り、興味のある場所だけでも、回ってみてはいかがでしょうか。
by トリッキー
八戸クリニック街かどミュージアム | |
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場所 | 青森県八戸市柏崎1丁目8-29 |
TEL | 0178-32-7737 |
時間 | 10:00〜17:00 |
Webサイト | 八戸クリニック街かどミュージアム |
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