最後にお邪魔させてもらった古津軽の中にアートを感じられるスポット。
「ゆめみるこぎん館」
こちらでは、幼少期に見た古いこぎんの美しさに衝撃を受けて以来、津軽の家々を訪ね歩き、明治期の古作のこぎんを収集し続け、2021 年に93 歳で亡くなるまで生涯をこぎんに捧げた故・石田昭子さんのコレクションが展示されています。
たった一人で歩いてこの膨大なコレクションを集めたなんて、石田さんの努力がなかったらきっと誰の目にも触れる事なく捨てられていた素晴らしいこぎん達。
それはもう素晴らしいコレクションの数々でした。「あぁ、去年来れていたらお逢い出来たのに!」と思いつつ、ご仏壇に手を合わせさせていただきました。
今回は石田昭子さんのお孫さんで、現在は雑誌「そらとぶこぎん(津軽書房)」の編集もされている、こぎん愛好家の石田舞子さんに教えて頂ける事になりました。とてもありがたいことでした。
好きな布と糸を選んで早速体験スタートです!紺色と白のイメージが強いこぎんですが、現在はこんなカラフルな手芸として、海外の愛好家もいるほど「こぎん刺し」はグローバルなものになっています。
文様には様々な意味があり、奥さんが旦那さんの為に想いや願いを込めて刺していたそうです(ひょうたん柄は種子が多いことから、子孫繁栄や多福を呼ぶことをあらわす吉祥文様といわれています)。
元々こぎん刺しとは、綿がとても高価で、庶民は麻で出来た粗末な着物しか着る事が許されなかった時代に、
荷物を運搬する際などに肩や腰回りが擦れてすぐ麻が傷んでしまう為、補強と防寒の意味で刺し子をして強度を上げたそうですが、いつしかそこに想いや願いを込めるようになり、美しい文様のこぎん刺しという文化が育まれていったんだそうです。
150 年前のこぎん刺しを特別に羽織らせて頂きましたが、補強された部分がしっかりしていて、本当に暖かったです。そして、とてもカッコよかったです!人の想いというのは時を越えてもなお伝わるものだと強く感じました。
こぎん刺しが上手な嫁はいい嫁として、嫁ぎ先も引く手あまただったと聞き、「なみ縫いがしつけレベルになってしまう裁縫が苦手な私は嫁に行けない…」と呟いたら石田先生が「だ、大丈夫ですよ、当時他の人にお願いしてやってもらっていた人もいたらしいので」と、優しく慰めてくださいました(笑)。
もちろん左のちっとも進んでいない方が私の作品(笑)。ひと目間違えるともう一回戻らないといけないので、頭の中にはずっと水前寺清子の「三百六十五歩のマーチ」が流れていた事は言うまでもありません。
体験は1,500 円(自分で作った作品とその時に使った刺繍道具も持ち帰れます)で、入館(見学)料は一人1,000 円(体験と入館(見学)セットの場合は2,000円)。こちらは自宅を改装して作った施設になりますので、完全予約制とのこと。電話かメールで必ず事前連絡してくださいね。
【ゆめみるこぎん館】石田さん
電話:090-5194-1278
今回、古津軽を訪ねて強く感じた事は「人への想い」です。その気持ちが物のない中で創意工夫を生み、美しい作品を作り、感動を与えてくれます。
「アートとは、心を揺さぶられるものでなければならない」
という言葉を聞いたことがあるのですが、その言葉の通り、誰かを想うその気持ちが作り出した美しいものには心を強く動かされたし、それは間違いなくアートであると感じました。古津軽を訪ねて、色々と気付きを頂けた旅になりました!
最後に、お忙しい中ご指導くださいました皆様、本当にありがとうございました。
フードカメラマン福田栄美子
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ゆめみるこぎん館 | |
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場所 | 青森県弘前市高屋本宮453−1 |
Webサイト | ゆめみるこぎん館 |
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