山々が連なり平地が少なく、ヤマセが吹き込む南部地域。稲作に適さないとされてきたこの地域では、古くから粉食文化が発達しました。
今回ご紹介するのは、おいらせ町の老舗、川越せんべい店です。
お店を営んでいるのは、五代目・川越将弘さん。やさしく穏やかな語り口で、お店やご自身のことを教えてくれました。
「店を継いだとき、自分は三代目だと思っていたんです」と話す将弘さん。
いったいどういうこと!?
「祖父がせんべいをつくっていて、父がそれを継いだので、自分は三人目だろうと。ところが父に聞いたら、初代はごませんべいで、二代目はまめせんべいで…と祖父よりも前の時代の話が出てきて」
創業は明治6年(1873年)。2023年に150周年を迎えます。創業当時の日本は、廃藩置県の直後。職を失った武士の中には、新たに商売を始めた人々もいました。川越せんべい店の初代・善吉さんもその一人です。
将弘さんがお店を継いだのは2016年のこと。将弘さんは高校までおいらせ町で過ごし、東京の大学に進学しました。英語が得意で、東南アジアの国々を一人で旅したりもしたそうです。卒業後、神戸でいったん就職したあと、語学に磨きをかけるべくアメリカに留学。その後、大阪やシンガポールで忙しい日々を送りました。
商品の特徴は「ふんわり」と「こんがり」。大量生産だと「べっちゃり」になりがちなところを、少量ずつ手ごねして「ふんわり」にするそうです。それから大きい石窯で「こんがり」閉じこめて焼きます。この「ふんわり」と「こんがり」の組み合わせによって、特徴的な「ショリショリ食感」が生み出されます。
せんべいづくりは重労働で、高い技術も求められます。その日の湿度や小麦粉の水分量に応じて、焼く時間の長さや温度を調整しているそうです。
「お店を継いだときは、経営面よりも、せんべいをつくること自体が難しくて苦労しましたね」と将弘さん。「職人として、ゼロからのスタートでした。先代から説明は受けましたけど、話を聞くのと実際にやるのとでは全然ちがいます。やって覚えるしかなかったですね」
添加物は重曹のみ。保存料、酸化防止剤、着色料、香料、人口調味料は、どの商品にも使われていません。
どれを食べてもおいしいのですが、個人的には「二代目・覚次郎のまめせんべい」がとくに好みでした!
せんべいは店舗のほか、オンラインでも購入できます。八戸駅に隣接するユートリーでも買えるので、旅のおみやげにもいいですね。
ぜひ一度お試しください!
by エムアイ
川越せんべい店 | |
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場所 | 青森県おいらせ町下明堂30番11号 |
TEL | 0178-52-2878 |
時間 | 9:00~17:00(日曜・祝日は定休日) |
Webサイト | 川越せんべい店 |
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