2022年12月に80周年を迎えた弘前こぎん研究所。こぎん刺しの商品を製造・販売するだけではなく、国内外でのワークショップや他企業とのコラボレーションなどを通じて、こぎんの魅力を発信しつづけています。
今回は弘前こぎん研究所の成田貞治さんにお話をうかがいました。
- 成田さん、いいネクタイですね! 似合ってます!
「こんな格好してるけど、じつはもともとこぎんをやるつもりなんてなかったんだよね」
- そうなんですか!? どんな経緯でこぎんに携わることに?
「東京で電気工事の仕事を長いことしてたわけ。そしたら28歳のとき、弘前こぎん研究所の所長をやってた父から声がかかって…」
- それで弘前に帰ってきたわけですね。
「地元に戻るって仕事仲間に話したら『おまえに務まるはずないから、何年かやって東京に戻ってこい』なんて言われた」
- それが実際には、何十年も続いたと。すごいことですよね。
「うん。気づいたら45年」

- 東京から帰ってきて、仕事も生活環境もがらっと変わったと思いますが、当時はどんな感じでしたか?
「昔の電気工事の世界ってのは男ばっかりでね。それがここに来たら360度みんな女性で、身の置き場がなかった。あの頃の自分はほんとうにだらだらしてたんだけど、外回りなんかしてると年配の女性たちに『若いのにこんなにがんばって』とかおだてられて。本気になりだしたのは、3年くらい経ってから。本を読んで刺し方とか歴史を勉強したり、テーブルクロスとか、けっこう大きいのも刺したりした。当時は目もよかったし」

「妻とは大揉めだったね。弘前に帰ってきたとき、まだ結婚して1年くらいで、妻が『なんでこんな田舎にこなきゃならないの』って。朝、起きたら妻がいなくて、東京に迎えにいったこともあった」
- そんなことがあったんですね…
「それも1回だけじゃなく、3回くらい。あと経営面でも大変な時期があってね、連鎖倒産の危機もあった」
- それは大変でしたね。
「それでもまあ、捨てる神あれば拾う神ありで、いろんな人に助けてもらいながら、なんとか今までやってこれた」

- 弘前こぎん研究所の生産体制について、教えていただけますか?
「こぎん人口っていうのはすごく多くなりつつあって、こぎん作家さんもたくさんいるんだけど、うちのいちばんの特徴は、組織としてやってること。たとえばイベントの記念品として、名刺入れを200個つくってほしいっていう場合、個人に頼んだら何年もかかっちゃうよね。うちは内職のシステムでやってるから、そういう注文にも対応できる」
- 内職の方々というのは、何人くらいいるんですか?
「全部で120人くらい。ただ、全員がつねに稼働してるわけじゃなくて、たとえばりんご農家さんだと、繁忙期は農作業をやって、閑散期にこぎんを刺したり。この内職のシステムに助けられて、製品がつくられてるわけ」
- とても効率的ですね。
「もしこれを8時間労働でやるとしたら、そもそも刺すのはそんな長い時間できるものじゃないし、製品の単価も高くなって売れなくなっちゃう」

- このシステムだと大量発注にも対応できるし、ひょっとしてオーダーメイドにも…
「そうそう、対応できる」


「手仕事として真面目に考えれば、システム化っていうのは邪道な部分があるのかもしれないね。ただ、講演とかでよくしゃべるんだけど、伝統工芸っていうのは結局、商売として成立しないと消えてしまうんだよね。ここのとなりに桶屋町ってところがあって、わたしが小さいときは桶をつくってる人がいたけど、今はもういない…」
「最近は続けていること自体に意義を感じるようになったね。継続は力なりっていうけど、ほんとそうだと思うよ」
- 最後に、あえて大きい質問をさせてください。成田さんにとって、こぎんとは?
「生活の糧だね。理想だとかなんとか以前に」
- さっぱりしてますね!
「わたしはね、こぎんを預かってる立場だと思ってる。伝統を預かって、次の人に伝えていく。それが私の役割だね。伝統っていうのはそういうものじゃないかな。次の世代につないでいくことが義務だと思う」
- 成田さん、今日はありがとうございました! またときどき立ち寄りますね!
by エムアイ
弘前こぎん研究所 | |
---|---|
場所 | 青森県弘前市在府町61 |
TEL | 0172-32-0595 |
FAX | 0172-32-0850 |
時間 | 9:00~16:30 |
Webサイト | 弘前こぎん研究所 |
その他 | 【定休日】土・日・祝日 |
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。