まるごと青森

能町みね子の「あんたは青森のいいところばかり見ている」(第9回)

観光スポット | 2023-03-17 10:30

下北はドライブイン天国 3

さて、下北半島のドライブインを巡る旅ですが、いまやドライブイン的なものの中では正統派となってしまった「道の駅」にも寄りました。

こちらが道の駅よこはま「菜の花プラザ」。オシャレな建築。
当然地元の野菜は豊富にございます。
霊芝って名前、健康食品とかの広告でしか見たことない。貴重なのでは……。
下北半島は私の大好きなべこ餅作りがたいへんさかんで、うれしい。
べこ餅の派生形みたいなものもたくさん売られてる。ぐるめ餅……?
ここまでいくとだいぶべこ餅から離れてくる。とにかく餅だ。餅菓子がさかん。
べこ餅はストラップにまでなっている。べこ餅アクリルキーホルダー、べこ餅ぬいぐるみ、べこ餅抱き枕ができる日も近い……!

と、まあ、「道の駅」は正統派な感じで楽しみまして。車に乗ってさらに南下する私たち。

実は、今回、最後にとっておいたところはドライブインではない。私がどうしても行きたかったところがあるんです。

役場、である。野辺地町役場。

役場の何が気になる?と思われるでしょう。

私はねえ、野辺地のあたりをグーグルストリートビューで見ているとき、たまたま野辺地町役場の前を通りかかったんです(バーチャルで)。そして驚いたんですよ、その古さに。役所や役場の類で、このタイプの古さはなかなかない。

当時の贅を尽くしてまるでお城のように荘厳に作った歴史ある役所は何か所か見たことがある。しかし、野辺地はそのタイプではないのだ。昭和の映画に出てきそうな、村人がふらっとなんらかの届け出に行くような、あの古さなのだよ!私が言葉で説明しても伝わるまい、さっさと写真を見ておくれ!

まずは木製筆文字看板、字も旧字体のままの「野邊地」!達筆!
ババーン!「日本遺産認定」の幕が新しいのがちょっとあれだけども、ザ・昭和の役場!映画で使ってほしい!
遠景からさらにどん!横に長い!縦に長くない、それがいい!
大木が役場を守る。とても優しさを感じる風景。
壁面や窓のサッシを見ると相当に年季が入っている。愛おしい。

実はこのたび、しっかりオフィシャルに見学させてもらえることになりました。野辺地町役場の柴崎功志さん、山崎杏由さんに案内していただき、たいへんお世話になりました(お二人の写真撮り忘れてしまった……ごめんなさい)。

ところで、私はネットで見たから、外観だけですごい!って興奮していたのだけど、実は外観以上に内装がよかった!

各窓口への入口の扉からしてこれ。大きなはめ殺しのガラス窓、しっかり入った縦の木目……昭和だ、良い昭和だね~。
長椅子、その後ろの壁の腰板、ペンキ塗り。天井から吊り下がる「税務課」の札。細部のデザインがすばらしい。作為じゃできない。

……とまあ、ふだん使われている1階もいいんですが、メインディッシュは2階だったのです。

まず2階に上がる階段よ。手すりの美しさ。壁はやはり丁寧に腰板で装飾がなされている。
ああ、ほれぼれする手すりと柵。カーブが美しい。

この階段、明治時代に建てられた野村治三郎の豪邸の一部を移築して据えられたものらしい。野村治三郎とは、北前船の寄港地として栄えた野辺地で廻船問屋を営んでいた豪商です。どうりで威厳があるはずだよ。

2階の一室(議長室?)。ステキな形の照明、薄いカーテンから漏れる光。ここで戦後すぐの頃の、とある地方の封建的な家庭を舞台にしたドラマでも撮ってくれませんか。
ずっとつづく腰板の醸し出す、ノスタルジックで少し寂しい、ちょっと怖い雰囲気。長く佇んでしまう廊下。ここでは重厚な昭和の警察ドラマを撮れる。
「野辺地町議会」という味のある手書き明朝文字だけを肴に、私は飲めます。
このにゅるっとした「委員會室」で2杯いけます。

こちらの役場、昭和29年12月27日落成だそうで、取材の時点で築68年。のち、隣に第2・第3庁舎もでき、そちらもなかなか古い。第3庁舎(昭和41年築)は元消防署だそうです。

第2庁舎は解体寸前……。
第3庁舎もそうとう根性入った外観をしている。

ご覧の通りの見所たっぷりの建物なので、私が特別に物好きってわけじゃなく、なんと年に一回くらい見学の人が来るらしい。やっぱりそれだけすばらしい建物なのだ。

さて、「広報のへじ2020年7月号」には、この役場を新築した際の地鎮祭の話が載っています。

ちょうどそのタイミングで野辺地に大相撲の巡業がやってきたので、横綱・鏡里(三戸町出身)に建設予定地に来てもらい、地鎮をお願いした、とあります。この地で横綱土俵入りがしっかり行われたのかもしれない……と思うと、大相撲ファンの私としてはやはりここに呼ばれていたのだ、という気分になる。この役場がずっとこれだけ長い間丈夫に使われているのも、横綱のおかげにちがいない。うれしいなぁ。

1階に戻りまして、町長室のほうへいくと、おや……気になるものがあります。

これは、もしかして……
このスイッチ(スイッチも古い!感動しちゃう)で点灯するんですよね!?

すみません。こういうの弱いんです。つけていいですか?

ともった!わ~い!

町長ランプで遊ばせてもらったりして、いやー大満足でございます。

ということで、頑丈でかわいくてかっこよい野辺地町役場ですが、これだけ古いとなるとやはり心配なのは、これがいつまで持つのか、ということ。

実は、かなり近いうちーーおそらく今年(2023年)、ついに建て直してしまうそう。

役場は建て直したら3階建てになり、第1・第3庁舎の部分は更地となって駐車場になってしまうんだそうです。なんとももったいないけど、「古い建物は残そう」派の私でも、雪国でこれだけの古さとなると無理も言えないなあ……。

存在しているうちに、お近くの方はちょっと眺めに行ってみたらいいんじゃないでしょうか。ひそかにオススメしておきます。

建物同士をつなぐこの複雑怪奇な電線を見ると、苦労しながらここを保ってきたんだろうなあ、と感慨にふけってしまいます。

 

by 能町みね子
【プロフィール】
北海道出身。文筆業。著書に、『逃北』(文春文庫)、『お家賃ですけど』(東京書籍)、『結婚の奴』(平凡社)など。大相撲好き。南より北のほうが好きで青森好き。新刊・アンソロジー小説集『鉄道小説』(交通新聞社)では青森の妄想上の鉄道について書きました。

 

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野辺地町役場
場所青森県上北郡野辺地町野辺地123−1
TEL0175-64-2111
Webサイト野辺地町役場

掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。

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