日本酒は、世界でもっとも広く料理に合うアルコール飲料。そう断言しても、決して過言ではありません。その原料は、米。ご飯を要とした日本の食卓が、国境を軽々と越えて世界のおいしいものを受けとめてきたのと同じ懐の深さを持っています。
日本酒には和食という公式は王道であり、揺るがない安心感がありますが、欧米の名だたるレストラン(和食ではなくフレンチやイタリアンです!)でも、日本酒をメニューに置く店が増えていることを考えれば、本家本元である日本でも、もっと自由を求めてもいいはず。実際、青森市のフレンチ「エヴィエ」さんでは料理と日本酒を合わせ、絶妙なペアリング効果を体感しました。加えて青森の酒肴キング・身欠きニシンをマリネするなど、意外な食材が洋の舞台で映えたのにも感動。醤油やわさびをはじめ、欧米のレストランでは日本の調味料や食材が注目されており、ボーダーレスな進化はこれから当たり前になっていくのかもしれません。
冷酒、冷や(常温)、燗と、温度帯を変えることで表情が豊かに変わるのも日本酒の面白さ。燗は味わいの奥で眠る風味を引き出し、花開かせる技であり、吟醸酒だってにごり酒だって燗映えする、と心得ていただけると嬉しゅうございます。
「燗酒で味わいが変わる上、寒さが深まる時期なら北国の温もりあるおもてなしになるのだから、活用しない手はありませんよ」と話していたのは、青森市の和食店「お料理 菜のはな」の野呂裕人さん。
ぬる燗にした「田酒 山廃純米」はきれいな甘味や酸味が程よく立ち、冬ならではの酒肴であるアンコウのとも和えをエレガントに包み込みます。このとも和えのように骨太な味わいには純米酒や本醸造、鰹ダシをきかせた一品のように香りの立つ料理には吟醸酒がいい、さらには原料となる酒米でも組み合わせは変わってくる……などなど。カウンタースタイルのお店は、美味美酒を味わいながら蘊蓄を得られる場にもなることを実感。以降も精進を重ねていこうと(飲んで食うだけですが)、決意をあらたにしました。
下北半島風間浦村下風呂温泉郷の「あさの食堂」さんでは、マダラの子の醤油漬けやアンコウのとも和え、筋子を、ご主人高瀬一郎さんのおすすめで「関乃井」の燗酒とともに。そのおいしさもさることながら、忘れがたいのはストーブの上のやかんで燗がつけられていた光景です。
はるばる北国に旅した人なら、情緒あふれる思い出になりそう。
百花繚乱ペアリングの物語の詳細は、「青森県、お酒と食のペアリングはじめました!」でご確認を。皆さまもぜひ、ペアリングの道を切り拓いてみてください。
(山内プロフィール)
1966年生まれ、青森市出身、紀行作家。これまで全都道府県、世界40ヵ国を巡ってきた。昼は各地の史跡や物語の舞台に立つ自分に、夜は酒に酔うのが生きがい。著書に「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(小学館)「赤毛のアンの島へ」(白泉社)など。
◇店舗紹介◇
店舗名 | フレンチ「エヴィエ」 |
住所 | 青森市本町5丁目3−1 高光ビル 1F たかみつビル |
電話 | 017-776-2207 |
店舗名 | お料理 菜のはな |
住所 | 森市本町5丁目4−20 |
電話 | 017-775-7265 |
店舗名 | あさの食堂 |
住所 | 風間浦村下風呂12−1 |
電話 | 0175-36-2838 |
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