11年ぶりのねぶた名人
青森が世界に誇る青森ねぶた祭。その花形である大型ねぶたの制作者「ねぶた師」から、このたび11年ぶりに「ねぶた名人」が誕生しました。
第7代名人に選ばれたのは、これまで30年以上の長きにわたり70台もの大型ねぶたを制作してきた竹浪比呂央さんです。
ねぶたの最高位である「ねぶた大賞」や最優秀制作者賞の常連であり、テレビのねぶた特番などで解説役としても活躍されているので、青森市民でなくてもご存じの方が多いのではないかと思います。
ねぶた名人って?
ねぶた師の中でも30年以上にわたって個人名で大型ねぶたの制作に取り組み、極めて高い技術をもってねぶた祭の振興に貢献してきたねぶた師が「ねぶた名人」として推奨されるのだそうです。
一台のねぶたの制作に関わる人はのべ300人と言われています。青森市だけでも毎年20台以上の山車が出陣するので、のべ6,000人以上が関わっていることになります。その頂点に立つのが名人です!
これまでに大型ねぶたを制作したねぶた師は、記録が残っている限りでも60人以上いますが、その中で名人になれたのはわずか7人です。数字で見ても、ねぶた名人になるのは並大抵ではないことがわかりますよね。
竹浪さんにインタビュー
今年のねぶた祭に向けてねぶた小屋での作業が進む中、竹浪さんにお話を伺うことができました。
「ねぶた名人に選ばれたことは、大変光栄なことだと思っています。私はもともとねぶたという人形灯篭そのものが大好きで、とにかくみんながあっと驚くような作品を作りたいという気持ちだけでここまで来ました。
作れば作るほど反省点が出てくるので、それを次のねぶたに生かして作るという繰り返しの結果、名人という称号をいただけたものだと思っています。
私自身はこれからも変わらずねぶたを作り続けていきます。」
ねぶたに対するストイックな思いが伝わってきます。
後継者を育て、祭と芸術文化を存続させる
竹浪さんがねぶた名人に選出されたのは、受賞回数や制作年数だけではなく、後継者の育成に注力してきた点も評価されたためだといいます。
多くのねぶた師は一人前になっても生活の保障がなく、資材の購入や制作補助者への人件費を除くとわずかな収入しか残りません。そのため、後継者を確保するのがとても難しいのが現状です。
このことに危機感を覚えた竹浪さんは2010年に「竹浪比呂央ねぶた研究所」を設立し、ねぶた独自の技術と感性を生かした多彩な作品を制作・販売することで、ねぶた師を目指す若手が生活基盤を築けるように取り組んできました。
「昔はねぶたは『祭に間に合えばそれでいい』と考えられていて、短期間のうちに急ごしらえで作っていたんです。そうではなく、価値ある作品を作る作家を育てていかなければと思って研究所を立ち上げました。当時の風当たりは相当強かったですよ。」と竹浪さんは振り返ります。
ねぶたを使ったSDGsがねぶた師を救う!
竹浪さんが代表を務める「NEBUTA STYLE(ネブタスタイル)」では、照明器具やインテリア雑貨、生活雑貨、アパレルなどの商品を開発しています。ねぶた師とメーカー、デザイナー、アーティストがコラボして最高のパフォーマンスを追求しているのだそうです。
照明・KAKERAシリーズはネブタスタイルの代表的な作品です。祭を終えて処分される前のねぶたの彩色和紙を1枚1枚丁寧にはがし取り、インテリア照明としてアップサイクルしたものです。
こういった商品を販売することにより、ねぶた師の活動が支えられているのです。
竹浪さんのねぶたに関する活動は多岐にわたり、とてもここでは紹介しきれないほど。お話を伺って強く感じたことが、竹浪さんが時に誤解や逆風を受けながらも新たなことに挑戦し続けるのは、ひとえにねぶた制作の後継者を育成し、祭と芸術文化を存続させるためだということです。
外を歩いているとお囃子の練習の音も聞こえてきて、祭ムードの高まりを感じます。今年は跳人の自由参加が解禁されたり、ねぶた師が3名も同時にデビューしたりと、ニュースが盛りだくさんです。
そしてやっぱり一番気になるのは、一体どんなねぶたが登場するのかということ。今からとても楽しみです!
【青森ねぶた祭】
日にち:8月2日〜7日(曜日にかかわらず毎年同日)
※8月1日は18:00〜21:00(予定)青い海公園特設ステージで前夜祭。竹浪さんの顕彰状授与式も同日開催
※8月7日は受賞したねぶたが青森港を海上運航します。
場所:青森市内
詳細は 青森ねぶた祭 オフィシャルサイト をご参照ください。
By ぺすか
竹浪比呂央ねぶた研究所 |
---|
掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。