まるごと青森

いっとちゃんの青森酒旅 Vol.1

グルメ 特産品・お土産 観光スポット 体験 | 2023-08-21 17:00

旨し一杯で人と酒の縁を結ぶ、酒販店のあらたな楽しみ1~青森市編~ 

 

 飲める! ここ数年、全国の酒販店で少しずつ、そんな展開が広がっている。買うだけではなく、その場で美酒を堪能できる店が増えているのだ。青森県内も、また然り。しかも九州の「角打ち」のようなディープな雰囲気の“酒場”とは少々異なる、初心者でも臆せず一歩を踏み出せるもてなしが待つ。というわけで幸せを探しに、青森市、弘前市で飲み歩いてみた。 

最初に訪れたのは、青森駅近くの安方「地酒庵さとう」。広く銘酒が揃うことで知られる店の奥に、立ち飲みコーナーが誕生したのは2022年11月のこと。 

「まずは、ゼロ杯を1杯に。若い世代や経験があまりない方にも、お酒のおいしさを知って欲しいとの思いからでした」とは、主人の佐藤秀紀さんだ。 

上/好みで選べる酒4種とおつまみワンプレートのセット。日本酒は「田酒」「陸奥八仙」「鳩正宗」のほかその時々で変わるので、伺ってからのお楽しみに。下/佐藤秀紀さん&史子さん夫妻。

カウンターで味わえるのは、県内の美酒を中心とした日本酒やワインなど常時10種以上。1杯500円前後~と、懐にやさしい価格な上、酒好きならば興味津々のレアものもときには含まれる。たっぷり飲むなら、冷蔵庫に並ぶ瓶を購入してもいい。 

進む道は多様だが、ぜひお試しいただきたいのがおつまみプレートが付いた4種の飲み比べセット。それぞれの酒に魅了されるのはもちろんだが、つまみが笑顔マシマシのハートを射貫く旨さ! 伺った日は貝焼きみそ風の卵焼き、アンコウの唐揚げ、玉ねぎのキッシュなど。それぞれが味わい深く、自分の口のなかに消えていくのが切なくなるほど美味なり。そして、酒が進む、進む、進む……。 

上/料理は左から「スモークサーモンのムース」、山芋のとろろと筋子を合わせた「雪見すじこ」「牛すじ煮込み」。合わせたのは黒石・鳴海醸造店「稲村屋」の限定酒。

そのほかにも筋子と山芋を組み合わせた一品やスモークサーモンのムースをはじめ、青森色をにじませつつ独自のアレンジが施された和洋つまみは多彩。酒との相性を考えながら、ちびちび飲み食いするのもおすすめだ。料理を担う史子さんは、こう話す。 

「日本酒が合うのは、和食だけではありません。洋のテイストでも酒肴になることを、もっと多くの方に知っていただきたいと思っています」 

言うまでもないが、酒販店の方々はアルコールの世界を深く知る水先案内人。秀紀さん、史子さんに相談しながら、ゆっくりと我が道を切り拓くこともできる。昼も営業しているので、「ワラッセ」など観光施設を散策途中に旅の方をお連れし、青森の酒をひけらかすのもいい。海外在住経験がある史子さんは、海外からのお客さまにも美味なる魅力を伝えてくれるだろう。 

上/吉田光良さんと、ウイスキー通もうれし涙がこぼれる棚。下/左手の冷蔵庫に入った、ビールや日本酒やワインを選んでもいい。

続いては官庁エリア長島の一角、2023年1月年にバーカウンターが誕生した「吉田酒店」。腰をおろして圧倒されたのは、国産はもちろん、スコティッシュ、アイリッシュ、バーボンと、壁をびっしり覆うウイスキーの数々だ。そのほとんどがワンショット500円程度からグラス売りで楽しめると聞き、どれにしようか笑顔炸裂で悩む幸せな迷い子になった。でも、大丈夫! 主人の吉田光良さんは、東京の大手ウイスキーメーカー勤務を経て家業を継いだ方。嗜好や自分の経験値を伝え、口福へと導いてもらい、訪れた夜はスモーキーな「アードベッグ」で乾杯。旨いねえとつぶやくうちに、いつしかおかわり……。 

昭和世代が甘く切ない思いにかられる、吉田コレクション。「レコードに針を落とす」という失われつつある美しい文化を、若い方には目の当たりにしてほしい。

そのほかにも青森が誇る銘酒をはじめ、焼酎、ブランデー、ワインと選択肢が実に多彩なのは酒販店ゆえの魅力だ。さらにはカウンター横の棚を埋めるレコードと、プレーヤーにもご注目いただきたい。シティ・ポップやファンク・ミュージックなどなど、吉田さんの大切な宝物が時を越えてもてなし役になっている。 

「我慢を強いられた3年間を経て、ようやく夜が賑やかになってきた。ゼロ次会として、さくっと飲みに寄っていただきたいですね。『楽しかった!』という言葉がうれしい一方、私自身も実は、皆さんとのやり取りを楽しんでいます」 

そう話す吉田さん同様、前出の佐藤さん夫妻も、飲み手の声を直接聞けるひとときを大切にしているのが印象深かった。ともに飲食店への酒の配達も日々の欠かせない業務であり、地元の名店からの信頼は厚い。すなわち、夜のまちの情報通といっても過言ではない。場合によっては、おいしい耳より最新情報も入手できるはずだ。 

振り返ってみれば、家庭でも酒を配達してもらうのが当たり前だった頃、“酒屋さん”は暮らしに溶け込んだ存在だった。新商品の案内から商品の取り寄せまで、かつてののんべえは酒販店を頼りにアルコール道を歩んだものだ。そして今、あらたな幸せほろ酔いステージの幕開け。まずは肩肘張らずに、扉をくぐっていただきたい。旨し酒と出会える機会はもちろん、佐藤さん夫妻、吉田さんとのおしゃべりも実りをもたらしてくれるだろう。 

次回は引き続き、弘前市編でたっぷり飲みます! 

 

<山内史子プロフィール>
1966 年生まれ、青森市出身、紀行作家。一升一斗の「いっとちゃん」と呼ばれる超のんべえ。全都道府県、世界40ヵ国を巡ってきたなか、昼は各地の史跡や物語の舞台に立つ自分に、夜は酒に酔うのが生きがい。著書に「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(小学館)「赤毛のアンの島へ」(白泉社) など。 

【写真:松隈直樹】

 

◇店舗情報◇

店舗名 地酒庵さとう
住所 青森市安方1丁目4ー4
電話 017ー722ー3087
その他 立ち飲みカウンター営業時間は、11:00〜17:30

※L.O.は17:00です。

店舗名 吉田酒店
住所 青森市長島2丁目4ー10 ヨシダビル
電話 017ー776ー5483
その他 立ち飲みカウンター営業時間は、18:00〜22:00
※店側の都合により、お休みする場合がありますので、事前に電話でご確認いただくことをおすすめします。

 

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掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。

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