美味や美酒と過ごすひとときはなにも考えずとも充分に幸せですが、酒と料理の相性の良さを意識すると、箸や盃がより軽やかに進むのをご存じでしょうか。口中で双方が一つになる相思相愛の物語が、互いのおいしさを引き立ててくれるのがペアリングという名の魔法です。
日本海、太平洋、陸奥湾、そして津軽海峡。青森県は全国の都道府県で唯一4つの海域を有し、それぞれ恵みが異なる食材の宝箱です。中央に鎮座する八甲田山をはじめ、山々もまたおいしい実りの場。青森市の老舗和食店「日本料理 百代」の主人・浪内通さんは、ご自分の経験を振り返りながらこう話します。
「四季折々、青森は海の幸も山の幸も実に豊富に揃う……。若い頃、修業のために他県で暮らしてはじめて気づきました」
県内には約20軒の酒蔵が点在しますが、異なる風土と多彩な食文化が育んだ酒の旨さもまた個性豊かで、料理と合わせたときの花開き方はそれぞれに異なります。ここ最近は純米、吟醸などに加え、酵母や貯蔵法の違い、季節の限定酒など、一つの蔵だけでも種類は数多。飲み比べが楽しいのはもちろん、ペアリングの選択肢は無限大といっても過言ではありません。
などという蘊蓄はさておき、百聞は一杯にしかず。「日本料理 百代」での、愉快なペアリング体験をご紹介しましょう。寒さ増す冬は、海の幸に脂がのり旨味を増す季節。たとえば 赤身、中トロ、大トロのマグロの刺身オールスターズは、「田酒」のまるみを帯びた味わいに溶け、互いの旨味がグンとふくらみました。この日は、「青森大好きで、趣味はフードペアリング」という、銀座「ロックフィッシュ」のオーナーバーテンダー間口一就さんもご一緒に。マグロに「陸奥八仙」を合わせて、笑顔に。おおっ、脂の甘味がふくらむではないですか。一方でウニと「豊盃」は、甘味が一つにとけあう厚みのある二重奏に感無量。なんて、すてき♡
皆さまにペアリングの幸せをお裾分けするため、その後も、飲んでは食い、飲んでは食い。まだまだお伝えしたいことは多々あるので、続きは次回に! ご自分でいち早く口福を体感したい方は、ペアリングスキルを家飲みで培う術をご紹介した「青森県、お酒と食のペアリングはじめました!」のチェックを!
(山内プロフィール)
1966 年生まれ、青森市出身、紀行作家。一升一斗の「いっとちゃん」と呼ばれる超のんべえ。全都道府県、世界40ヵ国以上を巡ってきたなか、昼は各地の史跡や物語の舞台に立つ自分に、夜は酒に酔うのが生きがい。著書に「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(小学館)「赤毛のアンの島へ」(白泉社) など。
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日本料理 百代 | |
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場所 | 青森市本町2丁目3−11 |
TEL | 017-776-5820 |
Webサイト | 日本料理 百代 |
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