まるごと青森

昭和の風が吹く、青森ドライブインの世界 ~時代を超えて愛され続ける「ドライブイン飯」の魅力~

グルメ 青森の人 | 2025-09-25 11:00

今年は「昭和100年」。
時代が平成、令和へと移り変わった今でも、青森県内には「昭和」の面影を色濃く残すドライブインが数多く点在しています。
年季の入った外観・内観、店主の人情、そして変わらぬ味。
そこには、時代を超えて愛され続ける理由があります。
今回は、青森県のドライブインと「ドライブイン飯」の魅力をお届けします。

つけやきそば発祥の地「ドライブイン西十和田」(黒石市)

創業:昭和45年
いちおしドライブイン飯:つけやきそば
つけやきそば誕生秘話
「つけやきそばは、この店が最初に始めたんです」
2代目店主の渡辺一央さんは、偉ぶるもことなく、穏やかに言います。渡辺さんは「やきそばの町黒石会」の初代会長として、B1グランプリで黒石の魅力を日本中に広めた功労者でもあります。東京のラーメン店で腕を磨いた後、故郷に戻って約20年。その技術と情熱で、地元民にも観光客にも愛される黒石やきそばを提供し続けています。
いちおしドライブイン飯
・つけやきそば(800円):
ラードとソースで香ばしく炒め上げた麺を、出汁スープに浸して食べる新しいスタイルが「つけやきそば」。
麺そのものの味も楽しめて、出汁スープとの組み合わせでまた違った美味しさを発見できます。
ソースは風味程度で、決して安っぽい味ではなく、出汁が香る本格的な味わい。
一般的な黒石のやきそばは蒸し麺を使いますが、ここでは地元製麺所やぶやの特注の生麺を注文の都度、茹でているので、もちもちとした食感が楽しめます。秘伝の継ぎ足し出汁スープ
朝から6時間以上、いわし・あじの煮干し、たまねぎ、ニンジン、昆布をコトコト煮詰めます。コク深い継ぎ足し出汁と香り高い当日の一番出汁を絶妙なバランスでブレンドし、醤油ダレと合わせることで織りなす複雑で奥深い味わい出汁スープ。——————————————–
ドライブイン西十和田
青森県黒石市温湯長漕7-4
営業時間 10:00-17:00
定休日 水曜日
TEL 0172-54-8134
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親子三代でつなぐ家族の物語「鯖石ドライブイン」(大鰐町)

創業:昭和48年
いちおしドライブイン飯:肉鍋定食、ラーメンセット
「白米のように、飽きずに、いつもの日常に寄り添える店でありたい」神さん一家の3代50年にわたるこの想いが、多くの人々に愛され続ける理由です。平成3年の「りんご台風」で店舗が半壊する困難を乗り越え、現在は店主の秀一郎さん、長男の洋一郎さん、次男の雄介さんを中心に家族とスタッフが一丸となって暖簾を守り続けています。いちおしドライブイン飯
・肉鍋定食(1,150円):
昔ながらのかつおと煮干しの出汁に、コクのある味噌が溶け込むスープ。ボリューム満点で、味変のおろしにんにくもオススメ。
・ラーメンセット(1,250円):
懐かしい醤油味のスープと、しっとりとしたかつ丼の組み合わせ。麺やご飯の増量が無料というサービスも、値上げが続く昨今において心温まる配慮。
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鯖石ドライブイン
住所:青森県南津軽郡大鰐町鯖石広田2-1
営業時間:8:00~20:30
定休日:水曜日
TEL:0172-48-4216
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みそラーメン50年の歴史「天間林ドライブイン」(七戸町)

創業:50年以上前
いちおしドライブイン飯:みそラーメン、肉鍋定食、親子丼
店主の中村憲光さんが先代から受け継いだ「みそラーメン」は、50年の歳月をかけて完成した逸品です。扉を開けた瞬間に感じるふわりと包み込むみそスープの香りが、訪れる人々を魅了し続けています。
いちおしドライブイン飯
・みそラーメン(980円):
かつては新潟の問屋から取り寄せていた味噌ダレを、現在は自家製で調合。合わせ味噌に豆板醤やにんにく、醤油などを重ねた深い味わいに、豚骨スープのコクが寄り添う絶妙なバランス。
・肉鍋定食(1,200円):
味噌、りんご、玉ねぎ、にんにく、生姜などを絶妙なバランスで合わせたタレを豚骨スープで丁寧に溶いて仕上げた絶品スープに、折り重なるほどたっぷりの豚肉と、豆腐、ささがきごぼう、白菜、ねぎ、人参を加えて煮たてたボリューミーな一品。溶き卵を絡めてたべると白米が止まりません。
・親子丼(1,080円):
中村さんが道の駅七戸の「レストラン絵馬」時代に開発した親子丼のレシピを磨き上げ、五戸町のあべ鶏と奥入瀬雅の卵を使った特別な一膳として提供。トロトロの卵とプリプリの鶏肉を甘めなタレでマリアージュ。
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天間林ドライブイン
青森県上北郡七戸町道ノ上40-8
営業時間 10:00-15:00
定休日 水曜日
TEL 0176-68-3328
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ワーカーの心に咲く花「はまなすドライブイン」(横浜町)

創業:約50年前
いちおしドライブイン飯:カルビ定食、ホルモン定食、マヨらーめん
「満席になると、夫婦二人では手が回らないこともあるけど、それでもみんなが喜んでくれるのがうれしい」
店を切り盛りする原さんの言葉からは、お客様への深い愛情が伝わってきます。食事処が少ないこの地域で、はまなすドライブインはまさに荒野に咲くはまなすの花のように、50年以上にわたって働く人たちの心とお腹を支えてきました。
いちおしドライブイン飯
・牛カルビ定食(980円)(ダブルは1,550円):
醤油ベースの特製ダレに漬け込まれたカルビが自慢。お肉2倍の牛カルビ定食ダブルもお得。
・ホルモン定食(880円):
豚タン・腸・レバーを濃厚な味噌だれで仕上げていて、味噌だれを少し焦がすと、さらに香ばしさが増して、白米が止まらない一品。
・マヨらーめん(680円):
まかないから生まれたオリジナルメニュー。しょうゆベースのスープにマヨネーズを合わせる独特の味わい。見た目は味噌とんこつ風だが、まろやかさとコクがクセになる、ここだけの一杯。
発電所関係の作業員や地元のワーカーたちでにぎわう平日の光景は、この店が地域にとってかけがえのない存在であることを物語っています。——————————————–
はまなすドライブイン
青森県上北郡横浜町雲雀平1-30
営業時間 11:00~14:00
定休日 水曜日、日曜日
TEL 0175-78-3289
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奥入瀬渓流の玄関口に佇む名店「ドライブイン桂月」(十和田市)

創業:昭和45年
いちおしドライブイン飯:牛バラ焼き定食、虹鱒の唐揚げ
奥入瀬渓流がとうとうと眼前に流れ、新緑が瑞々しく広がる焼山地区。ブルーグレイの外観が凛としたたたずまいのドライブイン桂月は、昭和45年創業の老舗です。店の扉を開けると、懐かしい昭和の空気と湯気をまとった食堂の温もりが迎えてくれます。
「昭和の頃の焼山は、レジャーランドからパチンコ店やボーリング場まであって、とても賑わいのある街だった」と語る店主の田中一守さん。
「娘には、継がせたくないんです。大変な商売ですから」と、ぽつり。
それでも、90代の父親と妻と三人で、静かに、けれど力強く暖簾を守り続けています。
観光地でも変わらぬ地元価格
「観光客の方だけでなく、地元の方々も大切にしたいんです」という田中さんの想い。奥入瀬渓流という一大観光地の玄関口でありながら、定食は900円から。観光地価格とはかけ離れた良心的な価格設定です。

いちおしドライブイン飯
・牛バラ焼き定食(1,300円):
地元民に昔から愛されるメニュー。甘辛いたれをまとわせた牛バラ肉を鉄板でじゅうじゅうと音を立て、溶き卵をまとわせれば、すき焼きのような優しさが口いっぱいに広がる。
・虹鱒の唐揚げ(700円):
地元十和田市で育った虹鱒を二度揚げ、頭から尻尾までサクサクといただく。
店内は観光客半分、地元客半分の絶妙なバランス。昭和を生き抜いた人の静かな誇りと優しさが滲む、まさに昭和の生き証人ともいえるドライブインです。——————————————————————
ドライブイン桂月(奥入瀬ゲストハウス桂月)
住所 十和田市大字法量字焼山64-263
営業時間 11:00~14:30
定休日 なし
TEL 0176ー74-2238
Webサイト http://keigetsusou.com
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半世紀の物語に幕を閉じる「さくらいドライブイン」(南部町)

創業:昭和43年
いちおしドライブイン飯:ひっつみ、かっけ、肉鍋定食
特記事項:2025年閉店予定
「十勝沖地震の4日前の開店でした」※
85歳の店主・櫻井さんが感慨深げに語るこの言葉からは、半世紀を超える深い歴史を感じます。高速道路ができる前、国道沿いのこの店は遠く仙台からもやってくるトラックドライバーたちで連日満席で、まさにドライブイン文化の先駆けでした。
※1968年5月16日の十勝沖地震を指す。
地域の伝統料理を手頃な価格で
「ひっつみ(すいとん)もかっけも、うちのメニューはみんな、ほぼ30年前の価格のまま」
地域に根ざした伝統料理を、誰もが食べられる価格で。原材料費が高騰する中でも、その想いは揺るがない。地域を愛し、地域に愛される名店の矜持がうかがえます。

いちおしドライブイン飯
・ひっつみ(すいとん)(450円):
小麦のもちもち食感に醤油ベースの和風スープ。季節の野菜もたっぷり。
・かっけ(450円):
出汁に一見するとワンタンの皮のような、つるつるとした食感のかっけに、にんにく味噌をつけていただく。ひっつみ同様、季節の野菜もたっぷり。
・肉なべ定食(850円):
あっさりとした味噌仕立てのスープに、豚肉、豆腐、人参、椎茸、ナス、キャベツ、ゼンマイ、ネギ。 季節によって変わる野菜たちが、大盛りのご飯と共に食卓を彩る。
時代を超えた出会い
この店には数々の著名人が足を運びました:
・黒柳徹子さんの母:疎開先の縁で来店、サインや手紙をいただく。
・豊川悦司さん:撮影で訪れ、スタッフと共に大勢で賑わう。
・出川哲郎さん:『充電させてもらえませんか?』で立ち寄り。

かつては、2階席もあり喫茶店も併設していた広い店内。壁に掲げられた旧青森県観光連盟の「ミニ観光案内所」のペナントからも、当時、観光客で賑わっていたことが窺えます。
時代の終わりに寄せて
さくらいドライブインは、地域の伝統料理を手ごろな価格で守り続けた半世紀の物語に、今年で幕を閉じることに決めました。
地元の方からは続けてほしいと言われる。
最近は、若い人たちも珍しがって写真を撮りに来てくれる。
昭和の雰囲気を懐かしむ人たちが、この店の価値を再発見してくれている。
それでも、コンビニの普及、高速道路の敷設など、時代の流れの中で、かつての賑わいを取り戻すことは困難で、85歳となる櫻井さんの体力の問題もあります。
櫻井さんの手で作られる最後のひっつみが、最後のかっけが、最後の肉鍋定食が、味わえるのもあと少し。———————————————–
さくらいドライブイン
所在地:南部町相内藤ケ森213-1
営業時間 10:00-18:00
定休日 火曜日
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青森ドライブインめぐりのすすめ
変わらぬ味、家族の絆、地域のコミュニティ。青森のドライブインは単なる食事処ではなく、効率や便利さでは得られない「人の温かさ」が息づく特別な場所です。
青森を訪れたら、ぜひドライブインへ。ガイドブックにはない本当の青森、昭和から受け継がれた温かな味と人情に出会えます。

By くどお

※営業時間・定休日等は変更となる場合がございますので、ご来店前に最新の情報をご確認ください。

 

掲載されている内容は取材当時の情報です。メニュー、料金、営業日など変更になっている可能性がありますので、最新の情報は店舗等に直接お問合せください。

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