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Story1りんご農家の暮らしぶりを訪ねる

津軽のりんご農家は、ホルモンに夢中です。

津軽ホルモンの名店たち

雪が深々と降る真冬の夕方、りんご農家の古村さんのご自宅の倉庫は、胃袋を掴むまでに香ばしい焼肉煙でモクモクしていました。
真っ赤に熾きた炭火に時折ジュウッと脂を落としては焼肉サウンドを奏でているのは「豚ホルモン」。

ホルモンを楽しむりんご農家古村家

古村家では、定期的に家族や親しい友人が集まっては、季節に関係なくホルモンを焼いて楽しむそう。これは古村家に限ったことではなく、りんご生産の中心部である中南津軽と呼ばれるエリアでは、焼肉よりホルモン焼きが主流。
しかも飲食店ではなくテイクアウト専門の精肉店から買ってきて、自宅のガレージや畑、庭などで焼いて楽しみます。

中村ホルモン ホルモン山本
大昇ホルモン

そんなわけで、津軽では一般な精肉店にもホルモンは揃うし、驚くべきことにホルモンしか扱わない精肉店も少なくありません。
試しに津軽地方のタウンページの「食肉店」部門を調べてみれば「☓☓ホルモン店」という店名がズラリと並んでいるはずです。

津軽のホルモン 津軽のホルモン 津軽のホルモン

二槽式洗濯機が必須アイテム!?

…しかも、どのお店もホルモンの下処理や味付けには相当なこだわりがあり、店ごとに味も香りも食感も異なる…という百花繚乱ぶり。
…食べ比べフェチにはたまらない状況が展開されているというわけです。
ちなみにどの店もホルモンの臭みを取り除くためには研究を重ねているそうで、秘伝の下処理方法を独自に編み出している店が少なくありません。が、どうやら二層式の洗濯機でホルモンを洗うという点については共通している模様です。

二層式の洗濯機でホルモンを洗う

地図で眺めて一目瞭然。津軽ホルモン環状線!!

で、津軽ホルモンの人気店をマップに落としてみたところ、驚愕の事実が明るみに!
なんと弘前市街地を中心にしてホルモン街道が環状線になっているのです。この“環状線”の沿線は弘前市の郊外にあたり、りんごの園地とりんご農家の集落が点在しているエリア。
さらに言えば津軽地方の経済と文化を牽引している心臓部にあたります。

津軽ホルモンの人気店をマップ

津軽ホルモンの人気店が弘前の市街地ではなく、りんご産業の活発な郊外郡部に点在しているということは、津軽ホルモンとりんご産業には何らかの密接な関係があるのかもしれません。実際にホルモン販売店のご主人に来店者の層について聞いてみたところ7〜8割が地元のりんご農家とのことでした。…りんごとホルモンの関係、なんだかとっても深そうです。

小学校の運動会でも、ホルモン!

特にりんご農家が大部分を占める集落では、年代に関係なくホルモン愛好者は多く、盆暮れ正月はもちろんのこと、PTAの会合や消防団の集まり、りんごの共同防除作業など、人が集まれば、ほぼ無意識に炭火を用意しちゃうぐらいのホルモン好き。
今では、珍しくなっているようですが、少し前までは、小学校の運動会にドラム缶で特製したグリルを持ち込み、玉入れで競う赤組と白組の勝敗の行方と香ばしく焼かれたホルモンとが“肴”として同列に位置するというほど、お父さんたちはホルモンに夢中…なんて現象も。ちなみに野菜の類は一切焼きません。

りんご畑の中心で、ホルモンを焼く。

「物心ついた頃からりんご畑でホルモンを焼いていた」という「弘前シードル工房 kimori」の髙橋哲史さん。ホルモンが好きだ!というパッションではなく、周囲に外食する店も無いし、ホルモンしかなかったら食べていたのかもしれませんと、なんだか控えめ。ですが、ホルモンはりんご農家にとっては欠かせない重要なタンパク源だったのかもしれません。さらに、ホルモンを食べる習慣がりんご栽培の盛んな地域に定着していることについてはホルモンは、もともと関西以西の食文化だったはず。おそらく津軽地方から関西までりんごを運んだ移出商が関係しているのかもしれませんねと推測します。

「弘前シードル工房 kimori」の髙橋哲史さん

りんご農家とホルモンの関係に魅せられた髙橋さんは、年に数回、津軽ホルモンを“文化”として語りながら、自らのシードルとホルモンをマッチングさせるイベント「ホルモン天国」を開催中。
地域で人気の店を数軒ピックアップしてホルモンを調達、「あーでもない、こーでもない」と自分の好みを並べ連ねながら食べ比べるというワクワクタイムが展開されます。

イベント「ホルモン天国」
イベント「ホルモン天国」
イベント「ホルモン天国」
イベント「ホルモン天国」
イベント「ホルモン天国」 イベント「ホルモン天国」

ホルモンの名店をご紹介!

というわけで、数多ある津軽ホルモン精肉店の中から、毛色の異なる4店舗を厳選して、その詳細を比較しました。
下処理の方法や味付けなど、各店舗が頑なにそのポリシーを順守するため、そのバリエーションは店の数と同じだけある…というわけで、どの店もわざわざ好みのホルモンを買うために、車を1時間以上も走らせてホルモンを求めにやって来る人がいるほどの名店揃い。
りんご農家たちの暮らしぶりの中で、独自に進化を遂げてきた津軽ホルモンを、ぜひ一度味わってみませんか?

津軽ホルモンの元祖とうたわれる、誰もが認める超有名店。

奈良ホルモン店
奈良ホルモン店

テイクアウト専門の「津軽ホルモン」のスタイルをつくり上げた店と言われる名店。創業以来、商品は自家製味付け豚ホルモン(内臓肉)のみ。卸売は一切せず、自店のみでの販売を貫き通しています。

弘前市青女子桜苅300
0172-72-1006
ホルモン(ミックス)500円/500g、サガリ700円/400円

ホルモン(ミックス)500円/500g 奈良ホルモン加工所

りんご農家から絶大な支持を受ける、津軽ホルモンの巨人!

水木精肉店
水木精肉店

休日ともなれば、ホルモンの待ちの行列ができるほどの人気店にして、倉石牛などの銘柄ブランド肉なども扱う大規模精肉店。
ガンダム(鶏のハラミ)やドラゴン(豚のど軟骨)と呼ばれるレアな部位も相当に気になりますが(笑)、今回はよそ見をせずにホルモン一筋で。
ちなみに一般的にホルモンと呼ばれていますが「ガツ(胃袋)」「ミノ(胃袋)」「小腸」「大腸」「直腸」「子袋」「レバー」「タン」などの部位がミックスされた状態で味付けして販売されることが多いそう。
にんにくの効いた“スタミナ系”の濃厚なタレが、りんごの農作業の疲れを癒やしてくれそうです。

平川市町居南田79-1
0172-44-2566
ホルモン(ミックス)90円/100g、サガリ140円/100g

ホルモン(ミックス)90円/100g ホルモン(ミックス) ホルモン(ミックス)

希望の部位を希望の量だけ購入できる!味付け無しにも対応してくれる名店。

髙谷精肉店
髙谷精肉店

希望の部位を希望の量だけブレンドして、自分だけのオリジナルホルモンが購入できるシステムを採用する隠れた名店。
タレ無しの希望にも応じてくれるなど、きめ細やかなサービスが売りです。
味噌やにんにくが控えめで、上品な味付けなのに臭みをほぼ感じないのは、店舗の中央に鎮座するパナソニック製の二槽式洗濯機のおかげか?

藤崎町藤崎若前51-3
0172-75-2138
ホルモン(ミックス)120円/100g、サガリ150円/100g、大腸・子袋・タンは各150円/100g

オリジナルホルモンが購入できる髙谷精肉店

食べ比べフェチに朗報〜!その場で焼き焼きできる精肉店を発見!

ホルモン あっと
ホルモン あっと

町の中心から離れた集落の道路沿いにひっそりと佇む知る人ぞ知る名店。なんと、店舗の奥に隠された(?)お座敷ではガスコンロを使って魅惑の焼き焼きタイムを堪能できる…という素晴らしい状況が。
隣村の「と畜場」を脱サラした店主による青森県産の豚ホルモンが人気。
タレは味噌の他に塩味も。味付けがあっさり系で、臭みのないホルモンのうま味を堪能できます。ちなみに店名の「あっと」とは店主の子供時代からのアダ名だとか。

藤崎町中野目字葛巻14-8
0172-75-5755
ホルモン(ミックス)100円/100g、サガリ160円/100g

ホルモン(ミックス)100円/100g ホルモン(ミックス)100円/100g

…というわけで、上記の4軒のホルモンを並べてみれば、見た目にもその違いが明らか。 まずはこちらが「奈良ホルモン店」。秘伝の味噌タレで味付けされたクセになる味わい。

「奈良ホルモン店」

次いで「水木精肉店」。4軒の中で最も味噌色が濃いのが明らかです。にんにくを利かせたパンチ力全開の味付けの虜になっているりんご農家が多数とか…。

「水木精肉店」

続いて「髙谷精肉店」。味噌やにんにくが控えめに使われた上品な味わいが、見た目にも感じられます。

「髙谷精肉店」

最後は「ホルモン あっと」。元「と畜場」勤務の店主が選ぶだけあって、視覚的にも鮮度を感じるホルモンです。

「ホルモン あっと」

というわけで、ホルモンに悶々としてしまったみなさん!気になる店でホルモンを少しずつ買い集めて「ホルモン あっと」で食べ比べる…なんてスペシャルな状況も、相談次第で実現するかもしれませんよ!

「ホルモン あっと」と店主
奈良ホルモン店

奈良ホルモン店
弘前市青女子桜苅300
0172-72-1006

水木精肉店

水木精肉店
平川市町居南田79-1
0172-44-2566

髙谷精肉店

髙谷精肉店
藤崎町藤崎若前51-3
0172-75-2138

ホルモン あっと

ホルモン あっと
藤崎町中野目字葛巻14-8
0172-75-5755

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