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Story2北国ならではの食の知恵を訪ねる

お米がたくさんとれ過ぎるから…ご飯のおかずは“お米の漬物”!?お米をめぐる“珍事”を探訪。

津軽の米文化

青森県の日本海側に広がる津軽平野は国内でも有数の米どころ。
どれくらい米どころなのか?というと、長い歴史を紐解けば、かつてはお米しかとれなかったこともあるくらい。そんなわけもあり、津軽地方にはお米にまつわる一風変わった生活文化が、そこかしこに散見されます。例えば、これ…。

お米の漬物 すしこ お米の漬物 すしこ

これらはすべて“お米の漬物”。これは「すしこ」と呼ばれる、津軽地方でも一部の地域でのみ作られている夏の料理。
見た目は混ぜものをした赤飯のようですが、きゅうりの古漬けやみょうがなどの少量の野菜を、蒸したもち米と混ぜ合わせ、乳酸発酵を促した、れっきとしたお漬物。紫蘇の赤さで鮮やかに色づけられたそれを、津軽では白メシに乗せて食べます。

すしこの巻き寿司

…時には巻き寿司の具になったりもします(笑)。
発酵によるさっぱりとした甘酸っぱさと、もち米の優しい風味とが絶妙に共存し、お米という食べ物の味覚的豊かさに改めて気付かされたりもするのですが、お米がご飯のおかずになってしまうという激しいまでの郷土性には、改めて青森という土地の愛すべき偏りを感じざるを得ません。

すしこにはココで出合える!

すしこマップ

すしこがどの辺りで食べられているのかをマッピングしてみました。
赤く塗られた地域の農産物直売所などでは、農家の奥様がたが手作りしたすしこがズラリ居並び、しかもそれが夕方前には店頭から消えているという状況を鑑みても、この地域の人々の暮らしの中にすしこは溶け込んでいることがわかります。

お米の漬物 すしこマップ

すしこのある食卓へ!

というわけで、すしこのある食卓を少し覗いてみましょうか。
このお母さんは「せっちゃん」こと、齋藤節子さん。日本海に面した漁師町、鰺ヶ沢町の中心部、JRの駅からもほど近い川沿いのご自宅で、ご主人の衛さんと一緒に「せっちゃんのエクスペリヤンスの家」という名の農家民泊を営んでいます。

せっちゃんのエクスペリヤンスの家

絶品の家庭料理と、容赦なく連発されるゴリゴリの津軽弁で、愉快なおもてなしを繰り出してくれる「せっちゃん」もまた、毎年すしこを仕込むのだとか。

絶品の家庭料理を作る節子さん

衛さんが釣ってきた魚(例えば初夏の金色に輝くとても綺麗な味と香りの鮎などはかなりの絶品!)、地ものの野菜、季節の山菜やきのこ、お手製の保存食などを駆使したお惣菜がずらりと居並ぶテーブルに…ありました!すしこが!

青森県産の野菜を使ったお惣菜 季節の山菜やきのこを使ったお惣菜 保存食などを駆使したお惣菜

せっちゃんの郷土料理は、料理上手として地域にも名が通っていたお姑さん仕込み。
すしこもその他ではありません。ばっちゃが教えてくれたとおりに料理しているだけだよとせっちゃんは謙遜しますが、お米のカタチがなくなるまでしっかりと発酵させたすしこは、実に優しく滋味深く、それでいて爽快な味わいです。
…うーん、これは確かにご飯に合う。もちろん日本酒にも相当に寄り添うこと間違いない…という具合です。

お米をめぐる“珍事”をさらにご紹介!!

上述したとおり、長い歴史を通じてお米が潤沢にとれ続けてきたこの地方、人々はお米を主食として食べる以外にも、餅菓子や保存食の材料として巧みに使いこなし、一風変わった文化を育んできました。すしこ以外にも面白いネタが豊富なので、その一部をご紹介しましょう。

あさか餅

あさか餅

お米で作った道明寺粉を香ばしく炒った「あさか種」を、大福餅の表面にまぶしつけた「あさか餅」。
小豆あんの甘味の中に、あさか種のナッツのような香ばしさが時おり差し込む絶妙な味わいがあとを引く、津軽地方ならではのソウルフードです。
この、お米で餅をつくるだけでは満足できず、トッピングにまでお米を使うというスゴい餅には、津軽地方各地の餅屋や和菓子店で出合えます。

ピンクのいなり

ピンクのいなり

津軽地方のいなり寿司は総じてピンクです。色付けにはわざわざ食紅を使い、そのうえさらに砂糖を潤沢に使って甘く炊いてあります。なぜピンクなのか? なぜ甘いのか? その理由を様々な人に尋ねても、返ってくるこたえは昔からピンクで甘かったから…というわけで…。

田んぼアート

田んぼアート

今や各地で盛り上がっている田んぼアートも、実は津軽地方で生まれました。津軽平野の南部に位置する田舎館村は「東北地方に弥生時代の稲作は無い」という当時の考古学の定説を塗り替えた垂水遺跡を有する自治体。
しかし、自慢できるのはお米だけ…というこの村が、苦肉の策で田んぼアートを始めたのは1993(平成5)年のことでした。
写真は当時の絵柄。
絵柄がアートだ!というよりは、田んぼをキャンバスに見立てるという行為そのものがアートなんでしょうね…という感想を述べたくなるようなこの状況が、スタートから10年目を迎える頃から劇的に進化を始め、その芸術性は年を追うごとに高まるばかり。
以下のサイトで最近の“作品”の凄さを確認してみてください。

WEBサイトはこちら
田舎館村 田んぼアート
ガジェット通信 田んぼアート

再び、すしこ。

さて。かなり脱線してしまいましたが、上記のお米をめぐる奇想天外な暮らしぶりを体験したくなってしまったあなた!まずは「せっちゃんのエクスペリヤンスの家」に宿泊して、絶品のすしこを味わうことから始めてみてはいかがでしょうか?
お客さんは、基本的には1日1組。全員がテーブルに揃ったら「あーでもない、こーでもない…」と楽しげに話す好奇心旺盛な「せっちゃん」との会話に花が咲きほこり、寝転んでテレビを観ていた衛さんや、3匹の猫が会話に加わったりしながら笑って過ごしていると、気づけば真夜中…というパターン。親戚の家でのびのびする感覚で、ぜひ!

すしこ

せっちゃんのエクスペリヤンスの家 鯵ヶ沢町舞戸町上富田86
0173-72-3745 1泊2食付6,500円(大人)要予約。お風呂は車で1分の温泉で。

せっちゃんのエクスペリヤンスの家(青森県鯵ヶ沢町)

せっちゃんのエクスペリヤンスの家
鯵ヶ沢町舞戸町上富田86
0173-72-3745
1泊2食付6,500円(大人)要予約

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